小咄
□紅葉
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3日後、まだ紅葉が散らないうちにと、早めに取材がセッティングされた。
「お天気になってよかったですね。」
「そうだね。凄い荷物じゃないか。貸して。」
「ダ・・・・・・ダメです!これは私の仕事ですから!」
打ち合わせの時と違って、今日の僕は完璧だった。完璧な仕事モード。穏やかな笑顔をふ
りまいて、耳障りのいい言葉を口にするだけ。
「少し、写真を撮らせていただいても構いませんか?」
「もちろん。それが君の仕事だろう?」
何度もとらされるポーズも、答え飽きた質問も手馴れたもの。
「あの・・・・・・」
「何かな?」
「よかったら、休憩にしませんか?――実はお弁当、作ってきたんです。」
「それはいいね。ちょうどお腹が減っていたんだ・・・・・・ありがたいな。」
簡単だ。みんなの理想のエボン党党首を演じればいい。本当は――誰かの手料理なんて、
恐ろしく苦手だけれど、ね。