小咄
□紅葉
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「――きませんか?」
「え?!」
不覚。
仕事中に話を聞かないなんて、凡そ僕らしくなかった。たぶん、数時間前――打ち合わせ
に来ていたパインとの会話が、妙な方向に弾んだせいだ。
僕は慌てて目の前の女性に注意を戻す。
「ごめん。もう一度、言ってもらえるかな?」
こういう時に、笑顔を振り撒くのは昔から得意だ。
「あの――紅葉を観に、いきません、か。」
――は?!
「すすすす、すみません!!!私ったらなんて図々しい・・・・・・!」
しまった。これもきっと、さっきのパインとの会話のせいだ。咄嗟に笑顔で取り繕う。
「こちらこそ、きちんと聞いていなくて申し訳ない。取材ということですか?」
「あ・・・・・・!はははは、はい!そう、そうなんです!
今度の企画は、新エボン党の党首への独占インタビューです!」