小咄
□君が残してくれたもの
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帰り際、ルーは思い出したようにとんでもないことを言った――まるで日常のちょっとし
た用事を、伝え忘れてたみたいなさりげなさで。
「ワッカ、私たち結婚しない?」
その時の俺――たぶん30秒くらい、時が止まったと思う。
「ねぇ、どう思う?」
もう一度ルーに聞かれたけど、なんて答えたかは覚えてない。その後のことは全然記憶に
ないんだ。
とにかく、いつの間にかルーと俺は結婚することになってた。
一体何がなんだか――信じられない幸せと、罪悪感、嬉しさと後ろめたさがごっちゃに
なって――どうしていいか分らなかった。
なぁ、チャップ――お前いま、どう思ってる?異界に行かなきゃってわかっちゃいるけ
ど、正直、お前に会うのが怖い。