小咄
□君が残してくれたもの
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俺の家を当の持ち主よりわかってるルーが、いつものように慣れた様子で2人分のお茶を
入れてくれる。
「わりぃな。」
そう言ってすすったお茶は、いつの間に覚えたのか、俺好みの温度。わかってる。それで
もルーは絶対に俺のもとには来てくれない。側にいてくれる、ただそれだけのこと。
真面目なんだ。チャップとのこともマジだった。だからこれから先、ルーが誰かを好きに
なることがあるとしても、それがチャップの兄貴ってことだけには絶対にならない。
そんなの、好きになるずっと前からわかってた。むしろ俺はこれまで、片想いであること
を望んできたんだ――チャップへの言い訳のように。
「ユウナ――あの子最近、無理に笑ってるように見えるわ。」
お茶を一口飲んだルーが口を開いた。
「面会のスケジュール、どうにかならないかしら?」
「俺も気になっちゃいるんだけどな……
肝心のユウナがきちんとしたいって言ってるからよ。」
「そうなのよね……我満強いというか。もっとワガママ言えばいいのにね。」
それから俺らは、他愛もない日常の細々したことを話し合った。