小咄

□君が残してくれたもの
2ページ/5ページ

俺の家を当の持ち主よりわかってるルーが、いつものように慣れた様子で2人分のお茶を
入れてくれる。


「わりぃな。」

そう言ってすすったお茶は、いつの間に覚えたのか、俺好みの温度。わかってる。それで
もルーは絶対に俺のもとには来てくれない。側にいてくれる、ただそれだけのこと。

真面目なんだ。チャップとのこともマジだった。だからこれから先、ルーが誰かを好きに
なることがあるとしても、それがチャップの兄貴ってことだけには絶対にならない。


そんなの、好きになるずっと前からわかってた。むしろ俺はこれまで、片想いであること
を望んできたんだ――チャップへの言い訳のように。


「ユウナ――あの子最近、無理に笑ってるように見えるわ。」

お茶を一口飲んだルーが口を開いた。

「面会のスケジュール、どうにかならないかしら?」

「俺も気になっちゃいるんだけどな……
 肝心のユウナがきちんとしたいって言ってるからよ。」

「そうなのよね……我満強いというか。もっとワガママ言えばいいのにね。」


それから俺らは、他愛もない日常の細々したことを話し合った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ