小咄

□聖なる泉
1ページ/3ページ

「・・・消えかかっちゃってるね。」


ユウナは、以前は聖なる泉と呼ばれていたその場所を見つめて呟いた。祈り子の力がなく
なってしまった今、マカラーニャの森はその原型をとどめておらず、完全に消滅するのも
時間の問題と言われている。


「そうっスねー。あれ以来だもんな―――」

それでもなお力強くその場に存在を示す大木を見上げたティーダは、ユウナの手を握った
まま答える。ユウナはそんなティーダの顔を見て微笑んだ。


「一度、キミと来たかったんだ。完全に消えちゃう前に。」

ユウナはゆっくりと泉に近づき、今は浅くなってしまった泉にそっと足を踏み入れた。
何でだろう。ここに来るとあの頃の自分の想いが甦る―――

いつの間にか後についてやってきていたティーダが、ユウナを後ろから抱きしめると、彼
女の頭に顎を乗せる。ユウナは、自分の頭上でティーダの笑みが零れるのを感じた。


「それにしても、さ。今朝のユウナには驚いたよなー。」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ