小咄

□午睡
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ビサイドの桜は、まだ散っていなかった。
満開に咲く桜の木を見上げて、ティーダが思い出を語る。

「初めて異界送りを見たときは、ちょっと怖かったな。綺麗だったけど―――」



その時、一陣の風が吹いて桜が一斉に散った。
青い空の下、舞い散る桜の中に佇むユウナは少しだけ、異界送りする時のそれに似ている。


「桜、髪についてる。」

ティーダがユウナの髪にひっかかった花びらを取ろうとした瞬間、もう一度風が吹いて
花びらがふわりと舞い上がった。

「ユウナは、桜が似合うっスね。」

「そう―――かな?」

「綺麗で儚げで、でも芯は強い。」

ユウナのことなのに、何故かティーダが自慢げな顔をする。
何故だかユウナにはそれがティーダらしく思えて、微笑ましく思った。

「それなら、ティーダはヒマワリだね。」

「コレのせい?」

ティーダはおどけた顔で金髪を引っ張ってみせた。

「ううん。どんな時でも迷わず前を向いてるから。
 それに―――キミにはやっぱり、夏が似合うよ。」

「それって、褒め言葉?」

「もちろん。」

2人は顔を見合わせて笑った。
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