小咄
□午睡
3ページ/4ページ
ビサイドの桜は、まだ散っていなかった。
満開に咲く桜の木を見上げて、ティーダが思い出を語る。
「初めて異界送りを見たときは、ちょっと怖かったな。綺麗だったけど―――」
その時、一陣の風が吹いて桜が一斉に散った。
青い空の下、舞い散る桜の中に佇むユウナは少しだけ、異界送りする時のそれに似ている。
「桜、髪についてる。」
ティーダがユウナの髪にひっかかった花びらを取ろうとした瞬間、もう一度風が吹いて
花びらがふわりと舞い上がった。
「ユウナは、桜が似合うっスね。」
「そう―――かな?」
「綺麗で儚げで、でも芯は強い。」
ユウナのことなのに、何故かティーダが自慢げな顔をする。
何故だかユウナにはそれがティーダらしく思えて、微笑ましく思った。
「それなら、ティーダはヒマワリだね。」
「コレのせい?」
ティーダはおどけた顔で金髪を引っ張ってみせた。
「ううん。どんな時でも迷わず前を向いてるから。
それに―――キミにはやっぱり、夏が似合うよ。」
「それって、褒め言葉?」
「もちろん。」
2人は顔を見合わせて笑った。