小咄
□ゲーム
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試合が始まる直前は、必ずスフィアプールの端に座って目を閉じる―――ザナルカンドにいた頃から変わらぬ俺の儀式。
閉ざされた視界の中、鳴り響く音だけに耳をすませる。
試合を待ち望むファンの大歓声。
勢いよく放出される水しぶきの音。
大音量で流される音楽。
スタジアムで奏でられる音のすべてが、俺を刺激する。そう、すべてエイブスの選手だった頃と同じ。
―――唯一違うのは、ズボンのポッケにユウナ手作りのお守りが入ってるってことかな。
スピラでは、ブリッツの選手は誰でも自分だけのお守りを持ってるって聞いたから。
ズボンの上からお守りにそっと触れ、俺のテンションが最高潮に達した時、がっつりキアイを入れて
目をあけると、飛び込んでくるのは、空と水の、青。皆が俺を待ってる―――
やっぱ、最高!
今シーズン、オーラカを追って2位のサイクスは戦略的なプレーを得意としてるけど、あくまで俺は、
真正面からのタックルやジェクトシュートにこだわる。
だってオレらはプロだから。
最強チームのエースは、ただ勝つだけじゃなくて、魅せるプレーをしないと。でしょ?
だから今日も―――
『決めた―――!!! ティーダのジェクトシュートは誰にも止められない!!!!』