小咄
□境界線
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「聞こえなかったのか―――俺は、お前の傍にいたいと言ったんだ。」
「き・・・聞こえてるっ。」
今の私、絶対顔が赤い。
赤くなった顔を見られたくなくて思わず横を向いたら、耳元に直接、ヌージの声。
「俺は―――」
―――ぞくぞくする。
「だから、わかったって!」
「お前はどうなんだ・・・?」
こんな時でさえ、自信満々のヌージがムカツク。
でも・・・もう誤魔化せない、そう思った。
「私は―――私も―――傍にいたい。」
消え入りそうな小さな声。これが私の精一杯。
ヌージは愉快そうに笑った。
「ではリュックに貸してやるわけにはいかんな。」
もう一度、キスが落とされる。まるで、抵抗できないってわかってるみたいに。
仕方ない。本を書くのはもう少し後にしてやるか。
これからもっと、面白いことがたくさんおきそうだから―――本を書くのはそれからでも、遅くない。