小咄

□秘密
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―――目が覚めると、キミがいない。


あの日。スピラの海にキミが帰ってきてくれたあの日。
キミは当然のように私の家まで一緒についてきて、『ただいま』って言ってくれた。

私が住んでた家は、今では"私たちの"家になって。
ビサイド・オーラカの選手になって、まるで前からビサイドに住んでたみたいに自然体のキミ。


あれ以来、私の周りには急速な変化がおこって、2人で囲む食卓にも、一回り
大きくなったベッドにも、ブリッツ・シーズンには2人でルカで過ごすのにも
慣れたけど…1つだけ、これだけはどうしても慣れることができないよ。


優しいキミは、私を起こさないようにそっとベッドから抜け出て早朝練習に行く。


1時間後、ようやく起きた私が眠気と闘いながら手を伸ばすと決まってキミが
いなくて―――ほんの一瞬、私はどっちが夢で、何が現実かわからなくなるんだ。

慌てて起き上がると、私の隣にもうひとつ枕があって。
ベッド脇にキミのフラタニティが立てかけてあるのが目に入ると、安心して台所にいく。


―――それが、キミがスピラに帰ってきてからの、私の新しい習慣。
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