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□アーロンの苦悩
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――何もかもお見通し、か。
強い意志が宿るブラスカの瞳を見たアーロンは、腹を決めた。
「失礼を承知で言わせてください――本気でザナルカンドへ?」
迷っていると言えなくなることはわかっている。だから、ブラスカが次の言葉を発する前
に急いで言葉をつないでゆく。
「シンは倒しても復活する。それは、スピラに暮らすものなら誰でも知っています。」
「それでもなお、ブラスカ様が究極召喚を手に入れることに意味が・・・・・・?」
「私は思うのです――きっとどこかに、シンを二度と復活させない方法が――」
「誰しも時間があるわけじゃないんだ、アーロン。」
突然、熱を帯びるアーロンの言葉は、穏やかなブラスカの声に遮られた。2人とも、会話
の行方など、始める前から分っていた。
――それでも。受け入れられはしないとしても。
結論は変わらないと知っていながら、それでも言わずにはいられない。その理由が、この
旅に加わった3人目の男の影響だと、アーロンにはわかっていた。最も、その男の未だに
好きにはなれないけれども。
「アーロン、我々は、鍛えられた人間だ。シンの攻撃をかわしながら新たな手段を探す旅
を続けることも不可能ではないかもしれない。そしてそれが――もしかすると、正しい
道と言えるのかも。」
「それなら!!!」
「だがね。その間、街の人々はどうなる?我々があてのない旅に出ている間に、ザナルカ
ンドを目指す別の召喚士とガード達は?」
「しかし――」
ブラスカは、まるで生徒を諭す教師のように、穏やかだが凛とした声でアーロンに告げた。
「私はね、アーロン。彼らを助けられるなら、それが間違った道でも構わないんだ。」