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□過去
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ブラスカは、2人の正面に座った。
「いったい急に、どうしたんだ?」
「いや――想像つかなくってよ。お前にその――嫁さんがいたなんてな。」
アーロンは、自分も先程の会話に参加していたことも忘れて、思わず呆れた視線をジェク
トに投げかけた。
「ベベルでユウナに会ってるだろう。」
「わかってねぇなぁ、カタブツ。ガキはガキだ。
ブラスカが父親ってのは"らしい"と思うんだけどよ――」
「気の強い女だったよ――いい女だった。」
遠くを見つめるような目をしたブラスカは、はるか昔、ベベルで平和に過ごしていた頃を
思い出していた。それはかつて、ブラスカが愛する女性と共に過ごした――幸せな時間の記憶。
「ベベルの僧官に噛みついて来たアルベドの女性を、後にも先にも彼女以外に私は知らない。」