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□父として
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「気を抜くなジェクト!」
考え事をしながら走っていると、アーロンが素早く剣を抜いて現れた魔物を斬りつけに走った。
――そうだ。今は余計なことを考えている余裕はねぇ。まずは、目の前の魔物・・・・・・それ
から、シンだ。
ジェクトは重さをものともせず、魔物に向かって長剣を振りおろした。
* * *
ジェクトは海を見つめていた。
魔物と対峙している時はまだよかった。他に、余計なことを考える余裕がなくなるから。
ビサイドへの連絡船の上で、することもなくぼーっと海を見ていると嫌でも思い出す――
ザナルカンドの暮らしと、海でのトレーニング、そして家族。
――アーロンのやろう、柄にもなく嘘なんかつきやがって。
ジェクトを励ますつもりか、凡そ彼らしくもなく――本当にジェクトの言う″ザナルカン
ド″があるかもしれないなどと言い出したのだ。
――これだけアチコチ旅して回れば、俺でもわかる。俺の知ってる世界はここにはねぇ。
帰り方もさっぱりわかんねぇ。それでも俺は――
しばらく海を見つめたあと、ジェクトはポン、と膝をたたいた。
――悩んでたってしょうがないか!他にやり方なんて知らねぇし――俺は俺らしくいくっ
きゃねぇな。帰ってやる・・・・・・絶対に。