X−0

□ジェクトの誓い
2ページ/5ページ

「そんなに落ち込むな。」


未だに暗い顔で頭を下げるジェクトを、ブラスカは穏やかな顔で励ました。


「落ち込んで当然です、ブラスカ様!
 こいつは酒なんてくだらないものに溺れて、我々の大事な旅費を――」

まぁまぁ、とブラスカはアーロンを宥める。


「さっき、もう酒はやらないって約束してくれたじゃないか。
 それに、ジェクトは旅費なんか惜しくはないほど、役立ってくれてるよ。」

「ほっっ、ほんとか?」

「危なかったとき、何度もジェクトに助けられた――それはアーロンも否定できないだろう?」


アーロンは思わず言葉につまった。

ザナルカンドではブリッツのスター選手だったと豪語するこの男は異常に視野が広く、誰
よりも早く魔物の接近に気づくので、命拾いしたことが何度かあった。


それに――認めたくはないが、戦闘に慣れてきた近頃では、アーロンよりも戦闘能力が高
いのは明らかだった。

ずば抜けてスピードが速い上に、鍛え上げられた肉体で重たい剣をなんなく振り回す。


だが――


「そっか!そうだよなぁ!なんか気分がよくなったから祝杯と――」

ブラスカに窘められるような目で見られ、ピタリと黙り込むジェクトを見て、アーロンは
ため息をついた。


――やっぱりコイツは、大バカやろうだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ