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□ジェクトの誓い
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「そんなに落ち込むな。」
未だに暗い顔で頭を下げるジェクトを、ブラスカは穏やかな顔で励ました。
「落ち込んで当然です、ブラスカ様!
こいつは酒なんてくだらないものに溺れて、我々の大事な旅費を――」
まぁまぁ、とブラスカはアーロンを宥める。
「さっき、もう酒はやらないって約束してくれたじゃないか。
それに、ジェクトは旅費なんか惜しくはないほど、役立ってくれてるよ。」
「ほっっ、ほんとか?」
「危なかったとき、何度もジェクトに助けられた――それはアーロンも否定できないだろう?」
アーロンは思わず言葉につまった。
ザナルカンドではブリッツのスター選手だったと豪語するこの男は異常に視野が広く、誰
よりも早く魔物の接近に気づくので、命拾いしたことが何度かあった。
それに――認めたくはないが、戦闘に慣れてきた近頃では、アーロンよりも戦闘能力が高
いのは明らかだった。
ずば抜けてスピードが速い上に、鍛え上げられた肉体で重たい剣をなんなく振り回す。
だが――
「そっか!そうだよなぁ!なんか気分がよくなったから祝杯と――」
ブラスカに窘められるような目で見られ、ピタリと黙り込むジェクトを見て、アーロンは
ため息をついた。
――やっぱりコイツは、大バカやろうだ。