小咄 A
□Tseng
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箱の中から目を離せずにいたツォンは、エアリスからまっすぐな瞳を向けられているよう
な気持ちだった。
それはまるで――天使の審判。
あの時ツォンはニブルヘイムで――この任務は汚なすぎると言った。たったそれだけ。
結局、当時上司だったヴェルド主任に事件の後処理のすべてを押し付けたにすぎない。
傍観者とは、最低の立場だ。
――手も汚さず、悪も正さず、ただ見てるだけの卑怯者。それがあのときの、俺。
あの事件は、それまで何の疑問も持たずに任務をこなしてきたツォンが、タークスでいる
ことに初めて揺らいだ瞬間だった。
ツォンは自分の罪を思いながら、そっと箱を持ち上げる。
――俺は、あれからもずっとタークスでい続けている。
タークスでいることの意味、それは・・・・・・
「主任?机に向かってるなんて珍しいのね。」
「シスネか――いや、なんでもない。ブリーフィングを始めるぞ。新しい任務だ。」
ツォンは箱をしまい終えた引き出しに再び鍵をかけると、別の引き出しから次の任務の資
料を取り出した。仕事を前に、矛盾した想いを再び封じ込める。
――たとえ何年経とうと、必ずこの手紙はお前に渡してやる。タークスは、どんな任務も
達成する・・・・・・何があろうと絶対に。
だから――頼むから――死ぬんじゃないぞ。生きててくれよ、ザックス=フェア。