小咄 A
□Tseng
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――これでもう、80通目か・・・・・・
ツォンはため息をつきながら、自分の手の中にある手紙を見つめた。
――また受け取ってしまった。彼女に嘘だけはつかないと、決めていたのにな。
この手紙を受け取るべき人物は今、神羅から追われる身だ。
――エアリスは、気づいているだろうか。
あれからもう、4年が経つ。
彼女はこの手紙に、どれほどの希望を託すことができているのだろう。
「きっとどこかで他の女の子と仲良くしてるのよ。」
ツォンに手紙を渡しながら、そんな強がりを言って嘯いた。
――約束を破るヤツなんかじゃないって、本当のことを言ってやれたらどんなにいいだろ
う。あいつはアンタのことを、ものすごく心配してたって――タークスの俺に、頼むくら
いに。
ツォンは、タークス本部に置いてある机の鍵がかかった引き出しから、箱を取り出した。
これまでエアリスがツォンに託し続けた79通の手紙が入っている、彼女の想いのすべてが
つまった箱。
箱の封を切って今朝受け取ったばかりの真新しい1通を投げ入れると、再び封をしようと
して動きを止めた。
彼女の想いから目を逸らすことができずに――