小咄 A

□Reno
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「もうちょっと現実をみろよ、と。」


ソファに身体を預けたレノは、頭の後ろで手を組み仕事仲間の面々を思い浮かべる。

意外に一途なツォンさんは、きっと今でもあの古代種に想いを寄せているに違いない。
シスネは一番かわいそうなことになってしまった。自分が任務に失敗したせいで惚れた男
が――いまごろあいつ、何してんだろ。
ルード。俺の相棒。いかつい顔してすぐ女を好きになるくせに、よりによってアバランチ
の女に惚れちまったりする困ったヤツ。
そして、一番ありそうに見えて一番可能性が低いのが、イリーナだ。

――主任の公私混同だけは、あり得ないぞ、と。


レノが把握する限り、仲間が恋する相手は、何故かいつも想いが通じるはずもない相手ば
かりだ。結局のところ、タークスの連中は本気で恋愛しようなんて思ってはいないのかも
しれない。

レノと同じ。普通の人生など許されないと知っているから。

それでもレノは夢を見る。

いつか、誰かが本気の恋をする。そしていつものバーに、今まで苦労を分かち合った戦友
たちが集まって、祝福するんだ。



いつか、きっと。
償いが終わる、その日がやってくることなんてあるんだろうか――
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