小咄 A
□Reno
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レノがやたらと他人の恋愛話が好きなのには理由がある。
タークスの人間に普通の幸せは許されない。
これまでそれなりに女遊びはしてきた。新羅のエリート部門、タークスのエースと言われ
るだけあって、街へ出かければ、その日を共に過ごす女には困らなかった。
だがタークスである以上、一人の女とまっとうな恋愛をして、幸せになるなんてことは、
許されるはずもない。
償っても償いきれないだけのことをしてきたから――おそらく自分はベッドの上でまとも
に死ねないだろうことは、理解しているつもりだ。
それにもし仮に、一人の女を愛したとして、任務中にその女が襲われているのを目にした
としても助けることは――恐らくできない。それどころか、組織からその女を始末しろと
いう命令が出たら、自分はきっとその任務をこなすのだろう。
タークスとはそういうものだ。
一度や二度、クラウドたちと手を組んだからと言って急に正義の側にまわりたいとも思わ
ないし、今までタークスの一員としてやってきた、プロとしての誇りを今さら捨てる気は
ない。
――今までもこれからも、俺はタークスとしてしか生きられない。
その代わり・・・・・・たった一人でもいい、仲間のうちの誰かには幸せになってもらいたい。
そんな夢を見続けている。
だからレノはしつこいほどに、仲間の恋愛事情を詮索する。
――けどな。