小咄
□聖なる泉
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「・・・消えかかっちゃってるね。」
ユウナは、以前は聖なる泉と呼ばれていたその場所を見つめて呟いた。祈り子の力がなく
なってしまった今、マカラーニャの森はその原型をとどめておらず、完全に消滅するのも
時間の問題と言われている。
「そうっスねー。あれ以来だもんな―――」
それでもなお力強くその場に存在を示す大木を見上げたティーダは、ユウナの手を握った
まま答える。ユウナはそんなティーダの顔を見て微笑んだ。
「一度、キミと来たかったんだ。完全に消えちゃう前に。」
ユウナはゆっくりと泉に近づき、今は浅くなってしまった泉にそっと足を踏み入れた。
何でだろう。ここに来るとあの頃の自分の想いが甦る―――
いつの間にか後についてやってきていたティーダが、ユウナを後ろから抱きしめると、彼
女の頭に顎を乗せる。ユウナは、自分の頭上でティーダの笑みが零れるのを感じた。
「それにしても、さ。今朝のユウナには驚いたよなー。」