善と悪

□仲間
1ページ/1ページ

家に帰り速攻でパソコンを開く。
少しでも新宿の情報屋の情報が欲しい。
そう思って開いたのだが、メールが来ていることに気づいた。

(誰から?)

そのメールを開いてみると、リングのメンバーの知り合いだからリングに入りたいというものだった。

(あー...新しく入りたいって人か。)

こういうメールは最近は全く来なくなっていたので久しぶりだ。

(どうしよ、いつ待ち合わせにしよっかな...)

そう考えながらも、早めの方がいいと思い今日の夜10時を指定する。
その旨をメールで返信し、新宿の情報屋についての情報収集を開始する。



しかし、まぁ分かったことはほんの少しであった。
分かったことは
・ちょっと前までは池袋に住んでいた
・色々な人に情報を売っている
・お得意さまからの紹介でその存在を知る人が多数
これだけだった。
サイトに侵入なども試みたのだが、セキュリティが固く一日や二日で突発出来るようなものではなかった。

「さて、どうしたものか......」

頭を悩ませていたのだが、時計を見ると既に午後9時を回っていた。

「ヤッバ!!遅れる!!」

急いで支度を始める。
今着ていた服を脱ぎ、白い簡素なTシャツの上に黒いパーカー、男物のジーンズをはいて髪を一つに縛る。
大抵はじめて会う人にはこうやって自分の性別がバレないようにしている。
そして黒い革製のバッグを背負い、住んでいるアパートから出ていく。
すると、ちょうどお隣さんが帰ってきた。

「あ、静雄さんおかえりなさい」
「おう、今から出かけんのか?」
「はい、めんどくさいですけど......」




トムさんと夕飯を食べ終え家に帰ってくると、ちょうど隣に住んでいる紗夜が出ていくところだった。
普段は人と話していると必ずイライラするのだが、紗夜はそんなことはなかった。
紗夜は昔の幼なじみで、彼女が中学生になるときに引っ越すまで妹のように可愛がっていた。
決して紗夜は無口というわけではないのだが、本心で俺と話している。
話していて不快感のない数少ない人物の一人だ。
しかしこんな夜遅い時間に見る人が見れば男にしか見えない格好でどこに行くのだろうか。

「どこに行くんだ?」
「あー、なんか呼び出されちゃって...」

珍しく返事を曖昧にする。

「女がこんな夜遅くに出ると危ないぞ」

そう言うと、苦笑で返された。

「大丈夫ですよ。私、並の男よりは強いですから。あ、でもさすがに静雄さんには勝てませんよ?」

確かに紗夜は強い。その事実は知っている。
一回だけ、本当に一回だけ戦った事があるけれども、確かに強かった。(一応言っておくと殴ってはいない)
それでも、まだ中学生の彼女が出ていくには遅い時間であった。

「それはそうだけどよ......」
「じゃ、行ってきます!!」

キリッという効果音でもつきそうな顔で俺の横をすり抜けていった。

「お、ちょい!!!!」

止めようとしたが、持ち前の足の速さで逃げられてしまった。

「ッたく......」

少し気がかりではあったが、紗夜が立ち去った方を少し見つめてから部屋に入った。



静雄さんから半ば逃げるように去っていったあと、私は待ち合わせ場所であるとあるトンネルに向かった。
何故そんな場所にしたのかは言うまでもなく、話す事が話す事だからである。
と、まぁ色々と考えているうちに件のトンネルについた。
フードを深くかぶり直し、トンネルの中に入る。
待ち合わせの人物はすでに着いていた。

「......あんたが館島か?」

少し前ネットで趣味でそういうことをしていた時期があり、男っぽい声で話す。

「......リングのトップのやつか」

相手の顔は見えにくいが、髪を染めていて服装もいかにも、といった感じであった。

「一つだけ聞く。あんた、仲間のことはどう思う?」

すると、その人物は少し迷ったようにしながら、

「.....仲間ってのは、自分の認めたやつで......」

と、そこで言葉が止まった。

「......わかった。とりあえず、仲間ということにしておく」

――《仲間というのは》

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ