大切なあなたへ

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『お、お母さん、荷物預けた方が良いよね!?私行ってくるからっ!』
「えぇっ?」


逃げるようにして立ち去ろうとした。
しかし、”早歩き”と”走り”。しかも青峰君が走るとなると普通の人より速いわけなので、すぐに捕まってしまった。


「ま、てよ!!」
『っ!!』


荷物を持っている方とは逆の腕を掴まれ、振りほどけない状態になってしまった。


『ひ、久しぶりだね、どうしてここにいるの?WCはどうしたの?』


なるべく悟られないように、やり過ごそうとした。
荷物を預ければ、もうそれで終わりだ。

なのに、その前に青峰君が来てしまった。
テツヤ君にはこのことを言ったが、試合があるので来れないだろうと踏んでいた。


なんで、青峰君が‥‥‥‥‥‥


「お前ももう知ってんだろ、負けたんだよ。‥‥‥‥何でテツんとこに行った?何でおれのとこに来なかったんだよ!」


私の腕を掴んだまま青峰君が叫んだ。
ここでは出会いが別れが多い場所だ。ありきたりの光景なのだろう、振り返って見る人はいたが、すぐに去ってしまっていた。


『私とはもう顔を合わせないんじゃないの?』
「もういいんだよ、そんな事は!おれが、おれが悪かったから‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥お願いだ、行くな。」


青峰君のこんな姿は見た事がなかった。
今まで元気で、輝いてて、自信満々で、楽しそうで‥‥だけど、途中から光がなくなって、寂しそうで、孤独で。
でも、こんな、嘆くような、後悔してるような姿は初めてだった。


「頼む‥‥‥‥」


両手で包み込まれた右手が暖かかった。
久しぶりに感じた青峰君の温もり。それだけで、泣けてきそうだった。

最近の涙腺は弱くなってる気がする。


『手紙、読んだ?』
「‥‥あぁ。」


バスケ部を辞める前、さつきちゃんに渡した手紙。
誠凛との試合が終わったら渡すように頼んだものだった。


『あの時に言った言葉はわかった?』
「‥‥‥‥前にも言っただろ、日本語で話せってよ。」


わからないとは思っていた。
否、わからないだろうから英語で話したのだった。

手紙には同じような事を書いた。
分かってほしいけど、すぐにはわかられたくないと思って、手紙では日本語で書いた。

一部を除いて‥‥。


『‥‥‥‥うん。』
「‥‥‥‥でも、手紙に書いてあった事はわかった。英語のも読んだ。」
『じゃあ、何で来たの?』
「だから来たんだよ。」


わからない。
手紙に書いてあった事を読めば、来ないだろうと思ってた。
さつきちゃんと二人で仲良くしてくれると思ってた。
何で今更私のところへ来たんだろう。


「テツに聞いた。お前がおれの事をどう思ってたかって。それで、もう一回手紙見て思った。お前が使ってたadoredって尊敬とか、憧れじゃねぇんだって。」




adore‥‥‥‥loveと同等の言葉。
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