大切なあなたへ

□16
2ページ/4ページ




「何でそんなことお前に言わなきゃなんねぇんだよ。」


つか、あんときも聞いてただろ。
学校にも来てねぇって事。


「WCが始まる前、佐倉さんと会いました。…………すごく、泣きそうな顔で。」
「っ…………。」
「心当たりがあるようですね。」


ある。
WC前に、あいつがいなくなる前日に…………俺があいつを傷付けた。

出ていった後、テツに会ったのだろう。


「その日は午後練でしたが、僕は少し早めに家を出ました。交差点に出た辺りで、うつ向いてフラフラしている女性が僕にぶつかってきました。

それが佐倉さんです。

その時に雨が降ってきたので、遠慮する佐倉さんを引っ張って、体育館に連れていきました。」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「こんにちは。」
「あら、早いわね………ど、どうしたの!?その子は!?」


もうすでに来ていたカントクが僕たちを見て、驚いた。
少し濡れてしまった髪を拭くため、予備として入っていたタオルを佐倉さんに渡した。


『……………ありがとう。』



連れてこられている間もずっと黙っていた彼女は、小さく呟いた。
カントクには毛布があるらしいので、取りに行ってもらった。
その間に、続々と体育館に入ってきた部員に説明していくのは大変だった。


「それで、あんなところでどうしたんですか?」


ほとんどの部員が揃い、佐倉さんにカントクが持ってきた毛布をかけ、尋ねた。

普通なら部活の時間だろう。今日は桐皇学園はオフなのだろうか。


『……………私………マネジャーを辞めたの………。』


えっ?

僕以外にもそう思った人はいるだろう。
しかし嘘ではないのはわかった。彼女の目には、涙がたまっていたからだ。


「な、んでですか!?何があったんですか!?」


自分でもわかるほど取り乱していた。

彼女は僕の憧れだった。
女の子なのに、強くて、いつも楽しそうで、青峰君たちと渡り合えて…………

だからこそ、マネジャーを続けていると聞いたときは、嬉しかったし、頑張ろうと思えた。
なのになんで…………!?


『私はもう…………必要なかったみたい……………。』
「そんなわけないじゃないですか!!それに青峰君だって…………!!」


彼が彼女を必要としないわけがない。
中学時代に、佐倉さんに言い寄る人たちから遠ざけてたくらい、大事にしてたんですから。


『その青峰君に必要と……されなくなったの………。』


酷く傷ついたその顔が、真実を物語っているようだった。

「話が見えてこないわ。黒子君、説明してちょうだい。」


全く事情を知らないカントクたちは複雑そうな顔をしていた。
とりあえず大まかに佐倉さんたちのことを話した。



「つまり、青峰君の幼馴染みのこの子は、キセキの世代の影姫で、桐皇学園バスケ部のマネジャーだったのを辞めた。と言うことね。」

そうです。と短く答え、チラリと佐倉さんの方を見た。
まだ俯いたままだ。


『もう、限界なのかもしれない…………。』


ボソリと呟かれた言葉は、しかしハッキリと聞こえ、彼女が傷ついているのがわかった。

「晴香ちゃんだったかな?その様子だと青峰君に何か言われたようだけど、何を言われたの?」

少しの沈黙を破り、カントクが尋ねた。


『……………青峰君が悪い訳じゃないんです。』




言いにくそうにしていたが、今まであったこと、思ったことを話してくれた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ