大切なあなたへ
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俺は近くにあったバスケットボールを手に取り、佐倉に投げた。
受けっとったバスケットボールをつき、再び俺に投げたあと、構えた。
あいつと、久しぶりに1 on 1した気がする。
いや、気がするのではない。久しぶりなのだ。
いつからだったか、あいつとバスケをしなくなったのだ。
互いに、時間がなくなったからと思っていたが、多分あいつが避けていたからなんだと今は思う。
『……………早く来たら?』
構えたまま、無表情で呟くあいつに横からスッと抜いた。
佐倉はそれに対応し、バックステップしながら俺についてきた。
しかし男女の差。
あいつが遅いわけではないが、足の速さは俺のが上だ。
俺はそのままダンクで決めた。
周りから見れば、普通に俺が抜いたように見える。
しかし、俺は何個もフェイクを入れたし、佐倉のディフェンスにも隙はなかった。
『………………。』
佐倉が無言で悔しがっているのがわかる。
どれだけ俺を避けてても、やっぱりあいつもバスケが好きなのだ。
「次、交代な。」
リングから手を離し、転がっていたバスケットボールを軽くついた後、あいつに渡した。
そして、構えた。
佐倉はオフェンスが特に強い。
あいつのバスケは読みがきかない………
というより、読んでも意味がない。
頭の回転が速いやつなら、止めることも出来るかもしれないが、それでもあいつのボールに追い付かなきゃ止められない。
あの赤司ですら戸惑いを見せたときがある。
初めて佐倉の本当のバスケを見たときは驚いたものだ。
佐倉はドリブルをしながら俺の様子を見てすぐ、俺の股の下にボールを通した。
俺はすかさず後ろを振り返ろうとして、止めた。
ボールはあいつの元へと戻っていったのだ。