大切なあなたへ

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声が止んだ。
動きも止まった。


誰かが来た。

「さすがにやり過ぎとちゃうか?そんなことしたら、その子死んでまうで。」

誰だろう。
見た事がある気がする。
ここは、3年生の教室近くのトイレだから、あの人も3年生だろうか。



「い、今吉!!」
「や、ヤバいよ!?」


今吉‥‥‥‥あぁ。
男子バスケ部の主将さんだっけ。
なんでこんなところに‥‥?


「な、んでここに今吉が!?」

「自分ら知ってるか?そこの窓開いてんで?まあ、さすがに下までは聞こえてへんやろうけど、隣の男子トイレには丸聞こえや。」



それだけで来たというのだろうか。
この人は自分に利益のない事はしないのではないのか?
ふとそんな事を思った。


「ま、後輩は大切にしななぁ。」


薄く開かれた目は、ぎろりと先輩たちを睨んでいた。

それを見て、ヒッと怯えた先輩たちは、そそくさとトイレから出て行った。


「大丈夫か?あいつらもヒドい事するなぁ。」



私に向かって手を差し出していたが、私は払いのけた。


『大丈夫です。わざわざすみませんでした。えっと、腹黒サトリメガネさんでしたっけ?』

わざと彼に向かって悪口を言った。

「自分、肝座っとるなぁ。一応助けた相手やねんけど。それに、先輩やで?」


知ってますよ。冗談です。
そう言いつつ私は立ち上がった。
私が本気で言っているわけではないという事をわかっているのだろう。彼は軽口を叩いていた。

私はビショビショになり、重くなった制服を少ししぼりながら、失礼します。と出て行こうとした。
しかし、トイレのドアの方に今吉先輩がいて、出られない。

『あの、どいてくれませんか?もう本鈴なりますよ?』

もう1分もないのではないだろうか。
私は呼び出しがあったときから、出れない事は覚悟していたので別に構わないが。


「あぁ、そうやな。でも、君に聞きたい事があんねん。ええか?」


先輩がそう言った後、すぐ位に本鈴がなった。


『まあ、別にいいですよ。』


私の返事を確認した後、それじゃあ、移動しよか。と言って、屋上の方へと歩いて行った。


さすがにワシが女子トイレにずっとおるわけにもいかんしなぁ。なんて言っていた。


「佐倉晴香ちゃんやんな?」

屋上に着き、先輩が腰掛けた正面に私も座った。


「まず、なんで先輩を叩いたのか教えてくれへんか?」
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