SHORT STORY

□期待なんてしてない
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目に涙が溜まってきた。



大輝に気付かれないよう体育座りをして、その膝の上に頭を置いた。








声は出したらバレるので出さず、私の涙だけが下にぽとりと落ちた。



何回落ちたのだろう。
私の下は小さい水たまりのようなものが出来ていた。




さすがにずっと下を向いているわけにもいかないため、涙を拭き、顔を上げた。




『大輝、私先に戻ってるね。』





私は立ち上がり、屋上のはしごに足をかけようとした時。
今日初めて大輝から声をかけられた。






「李璃、何で俺に隠れて泣くんだよ。」






気づ、かれた。





『な、泣いてないよ。どうしたの、大輝?』


「はぁ。こっちに来い。」




言われるがまま、再び大輝の近くへと寄った。







するとふわっと暖かい、大輝の匂いが私を包んだ。



大輝が私を抱きしめたのだ。





「泣くなら俺の前にしろ。俺、お前の彼氏だろ?」




そう言われた途端、涸らしたはずの涙がまた出てきた。




『だい、き。わたし、が、かの、じょでも、いいの?』




涙ながらに私は今まで疑問になっていた事を口に出した。
言ったら嫌われるかもしれない。
否定されるかもしれない。


そう思って出さなかった言葉は、口に出した今もやっぱり不安で。
ポトリ、ポトリと地面が濡れていった。






「当たり前だろ。何とも思ってない奴を彼女になんかするかよ、めんどくせぇ。」






ポンポンと私をあやすかのように撫でた手は、今まで以上に暖かかった。






「つか、不安になんなよ。俺なんかしたか?」






大輝に理由を話した。


好きだと言った事がない事。

桃井さんとは口喧嘩もして、仲が良さそうと感じた事。

もしかしたら、私の事は好きじゃないのかもしれないと思った事。




大輝は

「さっきも言ったけど、何とも思ってなきゃ一緒にいないし、俺は、お前とは喧嘩なんかせずに一緒にいたい。言わなかったのは‥‥‥‥そりゃ、恥ずいからに決まってんだろ‥‥‥‥/////」

と照れながらにも言ってくれた。


私はすごく嬉しかった。
大輝を抱きしめ返して、大輝の胸に顔をうずくめた。


『‥‥‥‥大輝、大好き!!』




「言うのはまだちょっとあれだけど、ちゃんと俺の気持ち伝えてやるよ。」



私の気持ちの返答に、大輝は



CHU!!!




キスで返した。



さすがにこれにはビックリした私は、顔真っ赤になっていた。



『なっ、な///////!?!?』


大輝はにやりと笑った。




「キスだけで照れてんじゃねぇよ。」




そう言った彼の耳も少し赤かった事は私の秘密だ。





でも、もう期待なんてしない。

言葉なんてなくても大輝は私の事を思ってくれてる事がわかったから。




『大好きだよ、大輝。』
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