大切なあなたへ
□EXTRA CHAPTER
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本日晴天。
季節は冬。
桐皇学園男子バスケ部は他と例外なく部活動をしていた。
真剣に練習に取り組む彼らがいる体育館の中は、熱気で一杯だった。
そんな中、練習後に集められた一部を除くレギュラーとマネージャーが呼び出された。
「何で俺らはこんな事してんすか!?」
今吉先輩の寮室に集まった私たちがやっている事は、課題。
しかし、ただ私たちは課題が出たからこんな場所でやっているわけではない。
課題が出されたのは私たちではなく、桐皇学園男子バスケ部エース:青峰大輝のものだった。
「青峰の課題なんスから、あいつにやらせましょうよ!!」
若松先輩は不満を爆発させ、今吉先輩に抗議していた。しかし今吉先輩は、まあまあとなだめるだけで青峰君を呼び出す気はないようだった。
そもそも何故私たちはこんな事をやっているのだろうか。
今吉先輩が言うには、試験が赤点だった青峰君に対し、先生が出した条件がこの課題を明日までに出したら、WCに出場させるというものだった。
つまり、明日までに出さなければ出られないという事だ。
普段なら、さつきちゃんが黙ってはいないだろうが、生憎今日はいない。
そして、カントクは青峰君の監視役に今吉先輩を頼ったらしいのだが、逃げられてしまったようだ。
「あいつ、これやらなきゃWCに出れねぇ事知ってんスよね!?なら、それをやってねぇってことは、出る気がねぇってことじゃねぇっすか!?」
若松先輩が尚咆哮しているのを軽く流した今吉先輩は、課題のプリントを手に取った。
「一応はやってるんやけどな。多少解いた形跡はあるねんで?」
しかしそこに書かれていたのは、名前と気まぐれ程度に書かれたような回答だけだった。
「青峰さんって、昔もそうだったんですか?」
こそっと私に尋ねてきた良君の問いに、応えた。
『まあそうだったけど、中学の時は征十朗君がいたから、逃げ出す事はなかったかな。』
「やっぱすごいんだな、キセキの世代の主将は。」
隣で諏佐さんも聞いていたようで、征十朗君に感心していた。
「それにあいつの答え、おかしすぎっすよ!」
青峰君の回答が書いてあった国語のプリントをぐいっと目の前に持ってきて、一つの回答を指差した。
そこには、
設問:おつうは何故、「決して部屋を覗かないで下さい」と言ったのでしょうか。
解答:うわきしてたから
と書いてあった。
「あいつ鬼っすよ!おつうがどんな想いで、織物を繕ってたのか!」
力説する若松先輩に私は一つ付け足した。
『いえ。青峰君、本気で浮気してたって思ってるだけですよ?小学生の時に私が読んでた”鶴の恩返し”を見て、真剣にそう言ってましたから。』
マジかよ。なんて驚きを隠せない若松先輩に、諏佐先輩が、
「いや、そもそも高校生の問題にこれが出る事自体おかしいだろう。」
と頭がいたそうに言っていた。
しかし、良君が出してきた問題にはまたある意味すばらしい答えが書いてあった。
設問:"Hey you! There is no smoking room!"を和訳しなさい。
解答:へっよー!このへや、よこずないねえぞ!
見事にひらがなばかりで書かれた解答に私は驚いた。
『日本ではSmokingを横綱って訳すんですか!?』
「え?や、いやいやいやいや、そんなわけないだろ。青峰のが間違ってるんだよ。」
おもわず指摘されて、そうですよね。なんて安心してしまった。
「佐倉さん確か頭よかったですよね?」
桐皇では成績トップ50名以内の人は掲示板に張り出されるので、良君はそれを見たんだろう。
『悪くはないと思うけど‥‥‥‥‥‥どうしても英語が足を引っ張っちゃって。』
「自分帰国子女やろ!?」
すかさず突っ込んできた今吉先輩に説明した。
『Japanese-Englishがよくわからなくて。それに日本の英語は堅すぎるんです。解答が一通りしかないんで、意味は合っていても、バツを付けられてしまうので、そのまま覚えようと頑張ってるんですけど‥‥‥‥。』
日本の英語はもっとオープンでもいい。そう愚痴をこぼしたら、そ、そうやな。と苦笑されてしまった。