大切なあなたへ

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佐倉side

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バスケ部に勧誘される前、母に言った。
アメリカに戻りたいと。

元々、どうしても嫌な理由があるならアメリカに戻ってもいいと言われていた。
ただ日本に行きたくないだけじゃダメだったが。

それを告げたとき、母にはすごく驚かれた。
大輝くんとさつきちゃんはいいのかと、聞かれた。

母は私が2人と仲が良いことはもちろん知っているし、母親同士も仲が良い。
私は何も言わず、ただ母をじっと見つめた。
さすが私の母と言えばいいのか、それ以上は何も聞かれなかった。

アメリカの学校は日本とは違い、秋からのスタートだ。
どうせならWCを少し見てから行こうということになった。

まさか、誠凛と桐皇が一回戦だとは思っていなかったけど。


「晴香、本当にいいの?」


家を出る際に、一度聞かれた。


『どっちにしろ、お母さんもアメリカに戻る予定だったんでしょ?じゃあ、いいじゃない。』


少し前に、父のアメリカ行きが決まっていた。
母は後で行くと言って日本に残ったが、私がアメリカに戻りたいと言ったので、予定より早く行く事になったのだ。
父は私が来る事を喜んでいたが、一瞬声が変わった気がしたのは気のせいじゃなかった。
親子というのは本当に不思議だ。
言わなくてもわかってくれるのは、ありがたい。

人は言いたくない事の一つや二つ、あるものだ。




たくさんの人が溢れる中で、私は母と荷物を引っ張っていた。
スーツケースを預けるためだ。
預けたらすぐにゲートへと向かう予定だ。

もう、後戻りは出来ない。
するつもりもない‥‥‥‥。


母と少し話をしながら、足を重たく感じないように気を紛らわせていた。
そんなこんなでやっていかないと、崩れてしまいそうだったからだ。
上手く笑えているかも不安だった。


「‥‥‥‥‥‥っ!!」


幻聴が聞こえた。
聞こえるはずのない声が聞こえた。

距離を置こうとしていても、やっぱり聞きたいと思ってしまうなんて、重症だな。なんて思った。


「‥‥‥‥‥‥佐倉!!」


「?あれ?大輝君‥‥じゃない?」

母に言われなくてもわかった。
私が聞き間違えるはずがない。
でも、嘘であって欲しかった。



「佐倉っ!!!」
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