大切なあなたへ

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青峰side

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昨日、テツ達に負けて、悔しかった思いがあった久しぶりの感覚だ。
けど、それ以前に練習したいと思った。

試合後に俺んとこに来たさつきを買い物に誘い、今はスポーツ店に寄った帰りだった。


「ねぇ、大ちゃん。」

何故か元の呼び名に戻った俺の名を呼んだのは、これで何回目だろうか。


「ほんとにさっきから何なんだよ。」

そして俺が問いかけるたびに、何でもない。と言って、黙る。
これが何回も続いた。

はぁ。と溜め息をついたら、白いものへと変わっていった。
それを見つめながら、後ろのポケットから振動を感じた。



「?」



誰からだ?と思って携帯を取り出すと、ディスプレイを見た。
そこには、長い間見なかった文字が映っていた。



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From:テツ
件名:お願いがあります
本文:

ストリートコートへ来てください。

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テツらしい、シンプルなメールだった。

しかし、今更何の用だろうと思いながら、方向を変えた。
何故か行かなければならないと思ったのだ。

「ちょっとどこ行くの!?」


さつきが叫んでいたが、ちょっとな。と言って、置いていった。

テツが絡んだときのさつきはハッキリ言って、めんどくさい。
置いていくのが妥当だろう。





「んで、何の用だよ。」
「どうも。ありがとうございます。」

歩いてそんなにかからないところに、ストリートコートがあった。
先に来ていたテツの元へと行き、用件を聞いた。

耳を疑った。

「僕にシュートを教えてください。」

確かにテツはこう言ったのだ。
試合に負けたやつに、言うことじゃないだろ。


俺はイエスともノーとも言わなかったが、テツはそのままシュート練習をし始めた。



「それで、どうやるんですか?」
「知るかよ!!」

無表情で聞いてきたあいつにイラッとした。
ベンチがなかったので、俺はゴール近くに腰掛けた。


俺は眠れなかった。
あの後家に帰って、メシ食って風呂入って。……そして横になった。
けど、いつまでたっても眠れない。
目をつぶれば試合のシーンが浮かんでくる。
ずっと忘れてたカンジ、忘れかけて懐かしんでみても、また味わってみれば結局苦いだけだ。

最悪の夜だった。

けど…………


「だからこそ今はバスケがしてぇ。」


練習を教えてくれと頼むテツに、自分が今思っていることを告げると、ふっと笑った。


「……青峰君。」


しょうがない、付き合ってやるか。


と言っても、テツのを見てるだけで、俺はテツの隣で指導しているだけだ。

しばらくやっていても、一向に入る気配がない。
やってみてください。と言われ、シュートを打ったが、そもそも俺のシュートは適当に打ちゃ入るものだ。テツに伝わるはずもなかった。

そこでふと思い、テツにシュートを打たせてみた。


あのときに見つけた改善点を元に、テツのシュートが入るようになった。
初めてマグレではなく入ったシュートにテツは喜んでいた。


しばらくすると、息の上がったテツの口が開いた。

「佐倉さんには、会いましたか?」



「…………は?」
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