大切なあなたへ
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WCが始まった。
あれから、佐倉とは喋っていないのはもちろん、会う事すらしていない。
あの時に体育館にいたやつらはこの事を黙秘しているが、それこそ居心地が悪かった。
佐倉は学校も来ていないらしい。
らしいというのは、さつきから聞いたからだ。俺はあいつとクラスが違う上に、ほとんど授業をサボって屋上にいる。
あいつへの連絡手段に携帯があるが、メールでも電話でもいざやろうって時に限って、言葉が出てこないのだ。
開会式が終わった。
その後すぐに、メールで赤司に呼び出された。
俺個人宛てではなく、キセキの世代へと一斉送信されていたようだ。
理由はわからない。
赤司が考えることは赤司にしかわからねぇから、あいつが来るまでわからないってわけだ。
無視しようと思ったが、さつきにもメールが来てたようで、さつきと一緒に行くことになった。
集合場所にはもうすでに赤司とテツ以外は揃ってた。
そしてさつきは少し離れたところにいると言って、どこかへ行ってしまった。
さつきは俺の監視役だったみたいで、赤司が配慮したようだった。
その後ちょっとしてからテツも来て、少し話していると赤司が来た。
そしたら、テツのお守り役に帰れとか言ってたけど、そいつは足震えてて動けそうにないし。
まあ、赤司があんなビビらすような威嚇するからだけど。
「なんだよ、つれねぇな。仲間はずれにすんなよ。」
すると、あいつの声が聞こえてきた。
「火神………。」
火神は赤司を見るなり、声をかけた。
あーぁ、怒らせたな。
案の定、赤司は緑間のラッキーアイテムのハサミを受け取り、火神に向かって突きつけた。
火神は寸前で避けたが、頬には傷ができていた。
赤司は火神が避けたことを予想していたのだろう。
そこまで驚いていなかった。
緑間にハサミを返し、クルッと向きを変えた。
そして、今日は挨拶をしに来ただけだ、とか言ってきた。
「ふざけんなよ、赤司。それだけのために呼び出したのかよ。」
じゃあ、さつきを見張りにさせてまでここに来させる必要なかっただろ。
「いや、本当は確認するつもりだったけど、皆の顔を見て必要ないと思った。全員、あの時の誓いは忘れていないようだからな。ならばいい。」
そう言って、階段を上がっていった。
一番上まで上がると、ふと思い立ったように立ち止まった。
「そうだ。晴香は何故いないのか知ってるか、大輝?」
赤司の一言で皆思い出したのか、口々に喋りだした。
「そういえば、いないっスね。」
「え〜、ってか晴香ちん、峰ちんとこにいたんだね〜。」
「此の間、マネージャーやってるって言ってました。」
「?IHの時はいなかったが、またマネージャーを始めたのか。」
そんな事‥‥‥‥
「…………俺が知るかよ。」
俺は佐倉を傷付けた。
だから、関わっちゃいけねぇんだ。
「最近は学校にも来てねぇよ‥‥‥‥。」