SHORT STORY
□青峰の彼女
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「は?お前彼女いたのかよ!?」
「それが何だよ。いちゃ悪ぃのか!?」
まだ練習が始まっていない体育館に、怒声が響いた。
声をあげたのは、桐皇学園高校バスケC:センター、若松孝輔だ。
誰もいない体育館に、いつもながら早めにやって来たレギュラー陣より先にいたのは、一年生してバスケ部エースの青峰大輝。
そんな青峰にもちろん若松が声をあらげ、それを主将の今吉がなだめている、という感じだった。
そして、彼女でも出来たら青峰も変わるんかなー。なんて一言に、は?もういるけど?と返してきたのが始まりだった。
「勝手に妄想して作った彼女とかじゃねぇのかよ!?」
「んなこと誰がするかよ!」
全く信じられないようで、妄想だ、嘘だ、など口々に否定するが、青峰はそれをも切り捨てていく。
「なあ桃井、あれホンマか?」
信じられないのは今吉も同じようで、先程スポーツドリンクを作って戻ってきた桃井に尋ねていた。
「………いますよ?」
少し間の空いた返答をして来た桃井に疑問を浮かべた。
「なんや?何かあったんか。」
「今ケンカ中でして、少し機嫌が悪いんですよ。まあ、青峰君が悪いんですけど………。」
「あー……だからあんな苛ついてんねんや。」
「はい………。」
見た目はあまり変わらないが、青峰の周りには多大なるどす黒いオーラがまとわっているように見える。
桃井と今吉の会話は筒抜けだったようで、二人にも聞こえていた。
「さつき!!!てめぇっ、余計なこと言ってんじゃねぇ!!!!!」
「っは、だっせぇ。彼女いても呆れられてんじゃ、しょうがねぇよな!」
「うるせぇ!!わかったような口聞いてんじゃねぇよ!」
青峰の怒りはもう抑えられることもなく、若松の方へと向いた。
しかし、それも長くは続かなかった。
青峰の携帯が鳴ったからだ。
バッという効果音がまさに似合う行動だった。
鳴った瞬間に携帯に飛び付き、耳に当てていた。
電話だったようだ。
「もしもし。」
相手の様子を伺うようにして、尋ねた。
さっきの話からすると、多分彼女からだろう。
「……………あぁ。…………あぁ。」
始めは彼女の言葉を聞いているだけの青峰だったが、
"俺が悪かった"
"今すぐ会いたい"
などと口にしたときは、もうすでに集まっていた部員たちの口があんぐりと開いてしまった。
「誰だよ、あれ。」
「青峰、なのか……?」
「李璃ちゃんには甘いですから、今度青峰君に言うこと聞かすときに頼ったらどうですか?」
「青峰が言うこと聞く彼女って、どんなやつなんだ………?」
ふと、出た質問には皆も気になっていた事だったようで、身を乗り出すようにして聞いていた。
「可愛いですよ!頭も良し、性格も良し、小さくて、その上プロポーションも抜群です!青峰君には勿体ないくらいなんですよ!!!」
桃井が熱弁しているのを少し引きぎみに聞いていた部員をよそに、青峰は耳から携帯を離し、辺りを見回した。
「どないしたんや?」
一番近くにいた今吉が青峰に聞いたが、返答する間もなく走り去った。
「あいつ!!キャプテンの事無視しやがって!何様のつもりだよ!!!」
「まあまあ。」
今吉がまたも若松をなだめる中、視線を青峰の方へとやった。
そして、驚いた。