SHORT STORY
□面白い奴
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『せんせー、お腹痛いんで保健室行ってきまーす。』
「ダメだ、座りな(ガラ)…………はぁ。」
皆から見て、私は不良に見えるだろう。
いや、見えてくれなきゃ困るのだ。
私は三城の本家の長女。
兄弟はいない。
つまりは、跡継ぎということだ。
昔は家のために礼儀正しくしていたが、 高校に入ってから止めた。
言わば一種の反発だ。
そのままあの薬品臭い部屋にいくのは嫌だったので、開放感を求めて屋上に来た。
ガチャ
『スゥー……ハァー………』
自分でいうのもあれだが、私は何でも出来る。
成績は常にトップ。 運動は水泳・陸上競技・弓道・空手・剣道で全国大会優勝。
茶道や華道も出来る。
出来なければ母に叱られ、父には睨み付けられる。
出来ても、それがさぞ当たり前のように言われた。
昔は、もっと頑張れば誉めてもらえると思って、テストでは100点。
運動もずっと、ずっと頑張って、全国大会で優勝という、好成績を残すことが出来た。
それでも、両親は誉めてくれるどころか、声すらかけてもらえなかった。
義務教育の中学までは真面目にしていたが、高校は自分で選び、寮のあるこの桐皇学園高校へと入学した。
そして、現在は不良の道を真っ只中に走っている。
『何か面白いことでもないかな…………。 』
「何がだよ。」
ポツリと呟いた言葉に、返事が返ってきたことに驚いてしまった。
一人だと思っていた屋上には、先客がいたようだった。
しかし、辺りを見渡しても誰もいない。
「どこ見てんだよ、上だ。」
ひょっこりと上から顔を覗かせたのは、最近バスケ部で噂になってる、青峰大輝だ。
『あら、有名人に声をかけてもらえるなんて光栄ね。サボり?』
「お前も十分有名だよ。つか、サボりはお互い様だろ。」
まあ、そうなのだが。
『その様子を見る限り、噂は本当のようね。』
「あ゛?何のだよ。」
『バスケの推薦できたのに、一切練習をしないってことよ。あと 、話しかけたら殴られるって噂もあったけど、それは嘘みたいね。』
「誰も殴ったことねぇよ。誰だよそんなの流したの。」
さあ。と答え、青峰君がいる場所へと上がった。
彼は、覗かせていた顔を引っ込めて反対側へと寝転がっていた。
『…………なにそれ?』
彼の手元には"堀北マイ"と書かれた雑誌と、水着などを着ている女の人がたくさん写った雑誌を持っていた。
「こんなのも知らねぇのかよ。堀北マイちゃんの写真集と、エ○本だぜ?」
『え…………』
言葉に詰まってしまった。
まさかそんな本だとは思いもしなかったので、かける言葉に困る。
『…え、えっと………面白そうだね……?』
とりあえず、つまらせながら出した言葉に、彼はカハッと言って笑った。
「そんなこと言ったやつ初めてだわ!お前面白ぇな!!」
『そう………?』
といっても、家庭の事情で買ってはいけない、見てはいけない、と言うだけで、雑誌という存在は知っている。
学校で、クラスメートがよく面白いというのを聞いていたことがあったので、同じことを言ってみただけだったのだ。
すると、授業の終わりを示す鐘がなった。
次は確か体育だったはずだ。
体を動かしたかったから、ちょうど良いかもしれない。
『…行かなきゃ。』
「なら、また来いよ。三城のこと、気に入ったからさ。」
そういったのを聞いて、屋上の扉を閉めた。
そういえば、面白いなんて言われたの初めてだ。
クスッと笑い、変な人だなと思ったが、少し惹かれているのにはまだ気付かない………………。