階段を上るアシオト
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「琴葉さん、だったかな。お父さんは元気か?」
この人も、父を知っているのか。琴葉は驚いて口が開いてしまっていたが、すぐにハッとし、声を返し、答えた。
『父は、亡くなりました。』
すると、王は一瞬顔をしかめていたが、その表情は哀しそうで、目が悲しそうにしぼんでいた。
「そうか…私は、兄さんに何もしてやれなかったな…。」
『兄さん!?どういうことですか!?』
父の両親も、兄弟も、皆んな亡くなったと聞いている。ましてや、国王と兄弟だなんて。
「君のお父さんは、もともと王の第一継承者だったんだよ。」
父が、王族………。
「君のお母さんと結婚するのを、身分違いだと父王に反対されて、駆け落ちしたんだ。」
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「俺はこの人じゃないとダメなんだ!!結婚できないのなら、俺は家を出る!!」
「兄さん…。」
「すまない、輝一。お前に全て押し付けることになった。」
「そんなことない。俺は兄さんたちを祝福する!」
「ありがとう。」
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「私は身分違いでも、そうでなくても、お互いに想い合っているのなら関係ないと思うんだ。違うか?」
間違ってはいないと思う。好きなのに、一緒にいられない辛さはもうよく知っている。
「それに、もう気にすることはない。身分的には大輝の従兄弟、親戚だ。皆もきっと祝福してくれるさ。」
私が、本当に、大輝さんの隣にいてもいいのなら……
『大輝さん』
青峰のほうへと振り返り、自分の気持ちを伝えようとした。しかし、それを彼に防がれた。青峰は、それは男が言うもんなんだよ、とニッと笑った。その顔は少年の表情そのもので、まだ幼さが残っていた。
「琴葉。俺と、結婚してくれ。」
もう、琴葉に迷いはなかった。
『お願いします。』
そして、周りから祝福とも捉えられる歓声が上がった。
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