階段を上るアシオト

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車から降りた先には、とてつもなく大きな城があった。


(ここが、王の城…)


門の前まで行くと、門番が立っていた。招待状を見せると門を開けてくれたので、一歩を踏み出した。見たこともないほどの人の数。そしてその人たちは皆華やかで、美しい。

自分がかここにいることがなんだか変な、そんな感覚に陥った琴葉だったが、スンッと花をくすぐられるような匂いがして、そちらの方へと足を進めた。




(何、これ…!?)



一瞬にして目に飛び込んできたのは、見たこともないくらいの豪華な食事がテーブルいっぱいに並んでいた。
どうやら自分たちで勝手に取っても良い食事らしく、さっそく琴葉は色々な食事を手に取り、食べ始めようとした。

しかしここにはたくさんの人たちがダンスを踊ったり、王子を探したりとせわしなく動き回っていて、ゆっくりと食べることができる場所がない。

辺りをキョロキョロと見渡すと、少し広いバルコニーがあり、誰もいない。あそこで食べようと思い、琴葉は足を動かした。






『おいしい…!』


初めて食べるものはとても美味しいものばかりで、頬も落ちそうだ。こんなに豪華でおいしいものを食べることは、もう二度とないだろう。味わって食べながら、それでももう残り半分となってしまった食事に、再び手をつけた。





「おい。」



今まで聞いたことがあった男の人の声は父親のものだけで、それよりも低い男の人の声が聞こえた琴葉はパッと後ろを振り返った。



「お前、何してんだ?」



え、食事を…と言おうとして止めた。私が今いるここは、入ってはいけない場所だったのかもしれない。そう思ったのだ。もしかしたらただ換気するためだけに開けていたのかもしれないそこにいる琴葉には、ごめんなさい、
と謝る他なかった。




「……ここでメシ食ってたのか?」


コクリと頷き、相手の様子を伺った。



「皇子んとこには行かなくていいのか?」


皇子…?あぁそうだ。と思い出した。
元々このパーティーは皇子のためのパーティーだったのだ。しかし琴葉は皇子のご機嫌取りをしにきたのではない。ただ、自由が欲しくてここにきたのだ。


『食事をしにきた……といったら、怒ります、か?』
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