階段を上るアシオト
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いつもと変わらない日々が続いていく中、一通の手紙がポストの中に入っていた。
宛名のないそれを不審に思い、裏返してみると、桐皇帝国の紋章の封がしてあった。
王家からの手紙が届くことは滅多にないが、特に不思議に思うこともなく、琴葉は封を切り、中を見た。そこには短く書かれた報告の文と4枚の招待状が入っていた。
”この手紙が届いた日から5日後の22時、この国の皇子のためのパーティーを城で開く。”
継母たちにその手紙を渡すと目の色を変えた。
皇子のためというのは、言い換えれば彼の結婚相手を探すため、ということだ。
彼女たちもそれに気付いたのだろう、もう残りも少ないというのに大金を叩いてドレスを3着も買った。
もちろん琴葉の分はない。継母と義姉2人の分だ。
やっと心を休めることの出来る夜の時間。
元々は自身の家だったにもかかわらず、現在は薄暗く、他の部屋とは比べ物にならないくらい狭い屋根裏部屋にある小さなベッドへと、横になった。
たくさんの食事は入らないお腹にしろ、あまり与えられていないそこに、琴葉は手をおいた。
これもいつものことだ。気にしてはいない。鳴り止まないことにも慣れた。
そして、疲れきった体を休めるために、そっと目を閉じた。
(分かってたことだけど‥‥‥‥やっぱり、少しだけ、行ってみたかったな。)
少しの欲。
今までほとんど出してこなかった欲は、外に出されることもなく、自身の胸の中に収められた。