依存している。
□31
1ページ/1ページ
しばらくの間、放心状態で二人を眺めていたアルトは、外の騒がしさで意識を取り戻した。
放心していた間、会話はすり抜けていたため現状はよく分からないが喧嘩は終わったらしい。
『ヴァクト、これ何の音?』
「賞金首“海賊狩りのゾロ”が暴れています」
「ほう…ルフィの仲間じゃな。威勢がいいのう…どれお前ら、止めてみい…!!」
お前ら、というのはコビーとヘルメッポのことだった。
二人は元気よく返事をし、ゾロに向かって走っていく。
ルフィも喧嘩を止めようと躍り出たが、コビーの蹴りで完全に火がついてしまい、喧嘩モードへ。
ヘルメッポの首元に当てられた二本の刀と、コビーの顔に突き出された拳で勝負が決まった。
ゆっくりと立ち上がったコビーはなにやらルフィに声をかけており、それがあいさつだと取れるとアルトは驚いた。
それと同時にルフィとゾロもコビーの言っていることを理解したようで「あのコビーか」と驚いていた。
無理もない、彼は見た目も地位もすっかり大きくなったのだ。
仲良さげに話していたのだが、ヘルメッポが大きな声を出した。
「誰だ?」
「おれだ――っ!!お・れ・だ――っ!!」
「知らねェよ。誰だ?」
「答えは…ヘルメッポだ!!モーガン大佐の息子!!ヘルメッポだー!!」
「?」
「お前を磔にして死刑寸前まで追いやった男だよ!!ロロノア・ゾロー!!!」
「「?」」
『まったく覚えられてねェじゃん』
「アルト中将――!!」
そんなに悔しいのか。
涙を流しながらヘルメッポがアルトに抱きつこうと走ってきたのでそれをさらりと避けた。
「あ、羽子―!!」
『いまさらかよ』
飛びついてくるルフィは受け入れ、なにやら楽しげにしているとヘルメッポは更に大きな声を上げた。
「あの時の!!七光りのバカ息子だァ〜〜!!」
「あ…お前か」
『なんだ、一発で気付いてもらえるのあったんじゃん』
抱きかかえたルフィの頬を伸ばしながらヘルメッポをからかうアルトの顔は、完全に玩具で遊ぶ少年の笑顔だ。
「なんじゃアルト、ルフィと仲良しじゃな」
『一回会ってるんで』
「ルフィも懐いとるようじゃしのぅ。アルトがルフィの兄貴になってやったらどうじゃ」
「羽子は兄ちゃんつうよりも姉ちゃんだなー」
『そういう問題かよ』
どうやら、この家族がそろうと自分がしっかりしなくてはいけないという気が出てきて、アルトはひたすら気を張った。
「――さて、じゃあ…おめェらこの壁直しとけ」
「え―――!!?そんな勝手な」
『直すくらいなら何で壊したんだ…』
「そうやって入った方がかっこいいじゃろ!!」
「そんな理由で壊さないで下さいよ!!じゃ、我々直すんであなたも手伝ってくださいよ!!?」
「え――!!?いいよ」
鼻を穿りながら金槌を振るう姿を後ろで見ていた麦わらの一味はただぽかんと見ているしかなかった。
ナミの隣でガープを眺めていたアルトは小さくため息を吐いた。
「ねぇ、あの人偉いんじゃないの?」
『同じ中将として恥ずかしいと思う』
♡