依存している。
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目の前にいるつなぎの集団が浴びるように酒を飲んでいる姿を目に納めながら、アルトはハートの海賊団のコックが作ったスイーツを漁っていた。
「甘い物好きなの?」
『おう。糖分は裏切らないぞ』
女子のような面で女子のように甘い物を口に運びながら漁るアルトとその後ろをちょこちょことついて回るベポ。
このコンビはローに『萌え』という名の衝撃を与えるのには充分で、現に今ローは必死に何かを抑えていた。
『プリンとろとろ♡ケーキふわふわ♡』
「アルト幸せそうだね」
「よくそんな食えますね…」
ようやく落ち着いて座り込み、漁ったスイーツを口に運んで幸せそうにはにかむアルトをみて、「こっちが胸焼けする」と顔を顰めながら傍でシャチが胸を押さえた。
コックを褒め称えはじめるアルトは気持ち悪いほどの上機嫌で時々、フォークに乗せたケーキをベポの口に押し込んでいる。
「相変わらずの甘党だな」
『甘味ほど美味いものはないね』
「くどくねェのかよ」
酒瓶片手に寄ってきたローもシャチ同様に顔を顰めてアルトの甘党を咎めていたが、口にフォークを突っ込まれて強制的に黙らされてしまう。
なんだか甘い雰囲気が漂い始めているとペンギンが思い始めた頃、電伝虫が鳴きだした。
誰のものかとアイコンタクトで流していくと、ハートの面子のものではないということが判明。
鳴り響く先を見れば、アルトが電伝虫を懐から出していて、ハートの面子全員に静かにするよう人差し指でジェスチャーしている。
緊迫した空気の中、アルトが受話器を取る。
《アルトか!?貴様、今どこにおる!!》
『北の海っすけど』
電話の主はセンゴク元帥だった。
現在地を伝えると、センゴクはため息を吐きながら言葉を漏らす。
《もう昇格の話は流れた。今回の約1ヶ月の開きも許してやる。その代わりに貴様に頼みたいことがあるのだが》
『頼みたいこと?』
《青雉を探して欲しい》
『えー、めんど。なんでおれなの?』
《貴様の能力ならすぐ見つかるだろ。頼んだぞ》
そして、ほぼ一方的に会話は切れた。
電伝虫が静かに目を閉じ、眠り始める。
アルトはそれを何秒か眺め、深いため息をついたあとに立ち上がる。
『仕事できちゃった。行ってくるわ』
「あぁ…」
『引き止めてくんないの?』
「馬鹿言うな。さっさと行け」
ローをからかうように笑ったアルトは、甲板の柵の上に立つとコウモリを思わせる羽を背中に生やし、軽く挨拶をして飛び立った。
取り残された船員達は、嵐のように去っていったアルトの背中が見えなくなるまで柵の前にいたが、しばらくしてまた宴を再会した。
酒を飲みながらまだアルトの飛んだ方向を見つめるローを、ペンギンはずっと眺めて笑いをこらえているのだった。
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