依存している。
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金色の長い髪を靡かせながら、木の根に腰掛けてなにやらおかしな能力でタロットカードを宙に浮かせた男がぶつぶつと何かを呟いている。
「対立、生存確率3%」
一枚カードを取り出しては呟き、またカードを出しては呟きを繰り返している男を、北の海という寒い気候のせいで口から漏れる白い息とともにアルトは眺める。
「逃走、生存確率100%」
カードを出して呟き。
「無視、生存確率100%」
またカードを出して呟き。
「会話、生存確率100%」
またまたカードを出して呟く。
そして、やっとアルトに顔を向けた。
重く開かれた目の上にはよく分からない三角形のものが描いてあり(眉毛なのか刺青なのか分からない)、不吉なオーラを出しているが良く見ると美人な男だ。
綺麗な顔同士をお互いが眺めながら、男が重い口を開かせた。
「おれを捕まえる気はないようだな」
『当たり。すごいね君の占い』
「……」
『“魔術師”バジル・ホーキンス』
笑みを浮かべて男の名前を呼んだアルトは、ゆっくりと足を運びホーキンスの真隣に座り込んだ。
木の幹の大きさが丁度良く、以外と安定した。
『ねぇ、おれを占ってよ』
アルトの言葉に肯定も否定も返さないホーキンスは宙に浮いたカードをしまうと、また新しくカードを出した。
手の中でカードを弄び、また宙に浮かせる。
その繰り返しを眺めているとホーキンスが喋りだした。
どうやらアルトを占っていたらしい。
「近いうち、自分の居場所を選ばなければいけない時がくる。選び間違えればお前は大切なものを失うだろう」
「自分」
「友人」
「想い人」
自分を失い、友達を失い、想い人を失う。
規模が大きすぎてそれがどういうことなのかアルトは細かい想像ができなかった。
「ラッキーアイテムは“羽”だ」
息をついたホーキンスは右手を翳してカードをしまい始める。
上等な占い師にタダで占いをしてもらい、なんだか自分が女子みたいだとアルトは心中で笑い倒した。
『“羽”か……なんの羽なんだ?』
「そこまでは知らん」
『へぇ…ありがとう、覚えとくよ』
笑って別れを告げるアルトはよく当たる占い師の恐ろしさをまだ知らない。
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