依存している。
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『久しぶり。ドレーク元少将』
「アルト……か」
北の海に渡ったアルトは顔見知りである男にまず声をかけた。
腹にどでかくXの文字をつけた海賊。
元海軍少将、海賊“赤旗”のX・ドレーク。
31歳のドレークはアルトと一番年も近く(アルトは28歳)、小さい頃から一緒にいたため、幼馴染として周りに通っている。
『ていうかさ、水臭いよね。水臭いっていうか礼儀ないよね。なんで海軍本部出てくときおれに一言言ってくんなかったのさ』
「お前…それを言うために会いに来たのか?」
『自惚れんなばーか。ルーキー見る旅してんだよ』
「そうか」
それを言うために会いに来た、というのも間違いではない。
アルトにはそういう気もあったが、図星をつかれると素直にそう教えてやるのが少し癪に障る。
子供の3歳差というのは大きなものだが、大人になればそうでもなくなってしまう。
だが、年の差関係なく自分よりも大分幼いままのアルトにドレークが世話を焼くのはしょっちゅうだった。
現に今、ドレークは頬を膨らませたままのアルトの機嫌を伺っている。
「お前はまだ“正義”を背負ってないんだな」
『ずっと背負う気ないよ。赤犬によく怒られるけど』
「相変わらずだな」
短く笑ってやれば、それだけでアルトの機嫌は直ってしまう。
幼少期からのことで、なんだか掴みづらいアルトのキャラをきちんと分かっているのはドレークだけだ。
アルトもそんなドレークに懐き、甘え、幼馴染というよりは弟のようにくっついていた。
――口にはしないが寂しいと感じてくれているのだろう。
口に出してしまえばまた「自惚れている」と否定されるに違いない言葉をドレークは心中で呟いた。
「で、何故ルーキーを見に?」
『ただ見たいっつうのもあるんだけど、今色々な理由で“大将”にされそうなんだよ』
されそう、という言葉に引っ掛かりを持った。
大将という地位を普通、されそうなどと表現するだろうか。
ドレークの疑問を払拭するようにアルトはアラバスタでのことを話す。
『まぁ、もう一ヶ月くらい席開けてるからそろそろ上も諦めるだろ』
「いつか降格されるぞ」
『そしたらまた上がればいい。とにかく、おれは他人のお下がりで昇格するのはやだ』
「……そこまで海軍に思入れはないんだろう?何故い続ける」
『なんとなくって感じかな』
思い返してみれば、確かに海軍本部にいる理由が自分でも分からない。
幼い頃に海軍に拾われた。
ただそれだけの理由でずっと海軍にいた。
憧れの人がいるわけでもなく、ただ周りの大人に戦い方を教えてもらいながら生きてきた。
『多分、い続ける理由が見つからないほどにやめる理由も見つからないんだよな』
「?」
『ドレークみたいに、自分の中で海軍にいたくないと思えるようなきっかけがないんだよ。だから多分、そのきっかけがあればおれはいつでも海軍を辞めれる」
住むトコ探すのめんどいじゃん?、と笑ってみせれば呆れたようにため息を吐かれた。
お前は何も変わってないな、というようにドレークは小さい子を可愛がる感じでアルトの頭を撫でる。
「きっといつか、お前の中で歯車が合わなくなるときがくる。そのときは後の事は悩まずに自分の思ったことをやれ。それがお前だ。見失うなよ」
『先輩からのアドバイス、だな』
からかってみせれば、軽く小突かれた。
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