依存している。
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「えーん、お兄ちゃーん」
西の海から南の海に渡り、ルーキーに会えたらラッキーだと考えながらとある町を歩いていたアルトのコートを小さな女の子が掴んだ。
――お、お兄ちゃん!?
目に涙を溜めながら、そうアルトのことを呼んだ少女はとても綺麗な顔立ちをしていた。
ピンクの髪に白い肌、そして子供のくせに唇に塗られたルージュ。
将来は美人になりそうだといらぬことを考えながら、アルトは2Mぴったりという長身を少女の目線に合わせてやろうとかがみ込んだ。
『どうした?迷子?』
「うえぇええん」
質問をしても少女は両手で目元を押さえて泣きじゃくるだけで、何も言葉を返してこない。
『お母さんは?』
『どこか怪我でもした?』
『何か失くし物?』
『友達と喧嘩でもした?』
様々な質問をしても答えは返ってこない。
痺れを切らせたアルトは先ほどの対子供用の声とは違う、また、普段の声とも違う、地を這うような低い声を出した。
『…いい加減にしねェと連行すっぞ。“大喰らい”ジュエリー・ボニー』
「…チッ」
容姿には見合わない舌打ちをかました少女は立ち上がったアルトに合わせ、己の体を元の姿に変化させる。
スタイルの良い、綺麗な女性の姿に変化した少女はじろじろとアルトを舐め回すように見た。
『面白い能力してるね』
「完璧だと思ったんだけどな〜。なんで分かったんだよ」
『台詞棒読みだし。普通容姿で分かるだろ』
「お前、もしウチが本当にただの餓鬼だったらどうしてたんだよ!」
『そのまま強制連行』
「鬼か!!」
いいや、黒鬼だよ。
と、アルトは不敵に笑ってみせた。
海賊に鬼だなんだと言われても笑いしか出てこない。
「で、その黒鬼様が南の海に何の用だよ」
『今後のし上がりそうなルーキーを見に、ね。まさか会えるとは思ってなかったけど』
「で、ウチはその中に?」
『入ってるよ。会えて嬉しい』
「…なんか口説き文句みてェだな」
少し恥ずかし気に顔をしかめたボニーは手を腰に当てて右側に聳える食事屋を指差した。
「腹減った。あそこでウチの仲間が待ってんだよ」
『あぁ、引き止めて悪かった』
「お前も来るか?」
『んじゃあお言葉に甘えて』
歩き出したボニーの横に着き、お店のドアを開ける。
ボニーの仲間が待つ机まで移動したとき、アルトの中に一つの疑問が生じた。
それは歩き出し、机の椅子に座り、ご飯をがつがつと食べるボニーを眺めるまでふくらんでいった。
『あれ?引き止められたのおれじゃね?』
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