依存している。

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特に意味は無かったが、なんとなく西の海から回ってみようと思った。


いつも海軍本部で仕事をしているアルトにとってこの旅行は自由で開放的な気分になった。
もっともこの台詞を優秀な部下であり、アルトのオカン(役)であるヴァクトが聞いたら「いつも自由気ままじゃないですか」と呆れることだろう。



『ファイアタンク海賊団頭目<ファーザー>、能力者カポネ・“ギャング”・ベッジ発見♡』



アルトの持つ望遠鏡の先には西の海から旅を始めた期待の新人(といっても大分年を食っている)であるカポネ・ベッジが仲間を連れて食事をしていた。
貴族の様なスーツに身を包み、黒い帽子を被ったその男は頭目<ファーザー>と呼ぶに相応しい男だった。


もう少しだけ様子を伺おうと再度望遠鏡に目を向けたアルトは驚きで目を見開いた。



『危ねェ!!!』



慌てて目を離し、今まで目を向けていた物を見ればフォークで望遠鏡のレンズが破損していた。
見れば、カポネが部下にフォークを手配させている。


気づかれていたのか。
新人といえど初出にしては良い賞金をたたき出した男だ。
しかもアルトよりもこの世界で生き延びた年数は多い。


破損した望遠鏡を眺め、ため息をついたアルトは重い足を無理やり動かし、正義の文字がないコートをポニーテールとともに風で揺らしながらゆっくりとカポネに近づいた。



『どうも』

「餓鬼中将殿がおれに何の用だ」

『ひどい言われようだな』

「とりあえず、殺り合う気がないのなら座れ」

『はーい』



敵を同じ席に座らせることなど、カポネの仲間が簡単に許すわけがなく「良いんですか頭目!」などと騒いでいた。
がそんな喧騒な雰囲気もカポネの睨み一つで落ち着いてしまう。
彼の威厳さが感じ取られ、アルトは楽しそうに笑みを浮かべた。



『今日は仕事じゃないから安心してくれ』

「ほざくな。貴様一人なんてことはない」

『かっこいー』



まるで西部劇の男の様だとアルトは内心で褒め称えた。
カポネの部下達もスーツに身を包み、カポネの食事の様子を身じろぎ一つせず見守っているためその手の組のように見える。


アルトの格好もなかなか上等なため、端から見たら溶け込んでいるようだが、アルト自身は自分が浮いているのではないかと心配になった。
この格好良い雰囲気をぶち壊していないかと思っていた。


――この餓鬼中将、何を考えているのか読み取れん…。


そんなアルトの思っていることなど知らないカポネは海軍としての仕事を起こしてこない目の前の異形にひたすら疑問と警戒を抱くしかなかった。








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