依存している。

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援軍としてヒナちゃんが来た頃にはおれ達のやるべき仕事はもう終わっていた。
色んな人間が戦いをし、複雑に絡み合っていた街ではもう争いは終わっている頃だろう。


アラバスタ王国には今、失われたはずの雨が降っているのだから。




「スモーカー君、アルト君!!この雨は一体何なの!?あなた達まさか“ダンスパウダー”を使ったんじゃないでしょうね!!?」



アラバスタ王国サンディ島の北で船を浮かせ、おれ達は椅子に座りまったりとしていた。


勢いよく振り続ける雨に不信感を抱いたヒナちゃんは腕を組んでおれ達を見下している。



「…………バカヤロウ、罪の分別くらいわきまえてる。アラバスタの王がこの粉に手を出さねェ事で守り抜いた条理をおれ達が今破ってどうする」

「…それは失礼。ヒナ反省。カワイイ事言うのね“白猟”ともあろう男が。アルト君の容姿くらいカワイイわ。昔よりは丸くなったのかしら?」

「余計な世話だ」



背を向けながらスモーカーは短く吐き捨てた。
ボキャの少ないスモーカーはあまり女性と話すのが得意ではないのだろうか、たしぎちゃんと話すときもなんだか素っ気無い気がする。


だが思い返してみればおれと話すときも愛想がいいとは言えないので女性限定のことではないのかもしれない。


背中で語る男、うん、いいじゃないか。



「――それにしてもずいぶんじゃない?このわたくしの精鋭部隊をたかが船探しに使うなんて……酷く心外よ?ヒナ心外」

「同期のよしみだ。そう言うな」

『それがダメならおれからの指示ということで』

「あなた達はいつもそれ…たしぎとヴァクトの苦労をお察しするわ」



そんなに苦労させているのだろうか。
あいつはあいつで言いたいことはきちんと言うタイプだし、何もなければ黙っておれの言う事を多分「死ね」までは聞く奴だ(それはそれで困るが)。


ヒナちゃんの言葉が少し引っかかったので、今度あいつに休みをくれてやろうと思った。



「それよりお前。この『人工降雨船』を本部へ運べ」

「なぜ?」

「それとこれからたしぎが連行してくるクロコダイルも一緒にだ」

『正確にはヴァクトとたしぎちゃんが、ね』

「いい加減になさい。あなた達何を勝手な事言ってるの」



おれ達の乗る船の正面にはB・Wの持つ『人工降雨船』がある。
この船の二倍ほどのでかさで、今降っている雨の原因はこいつだ。


ヒナちゃんはクロコダイルのやっていたことを知らないため、おれ達の指示に疑問を抱いているようだ。
無理もない。
クロコダイルは七武海だったのだから。


ちょっとした賭けだとスモーカーはコインを出し、それを上に放り投げると自分の手の甲に押し付けた。
「表」とヒナちゃんの冷静な声が響き渡る。
手の甲のコインは裏だった。


「お前の敗けだ」

「あなたって本っ当に勝手。入隊当時から何も変わらないのね。ヒナ失望」

「ああ結構だ。自覚している」



ヒナちゃんの部下の海兵達が『人口降雨船』の中を確認している姿を窓から眺め、ふと考えた。


麦わらたちは無事にクロコダイルを倒せただろうか。



敵である海賊の心配をしている自分に気づき、おれは一人苦笑していた。








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