依存している。
□03
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何か慌てた様子でアルトの部下であるヴァクトが廊下を駈けていく。
彼は中佐という位置にあり、アルトを尊敬していた。
拳銃で闘う、悪魔の実も覇気も所持しない彼は時々アルトに稽古をつけてもらうため、自分の上司の強さは痛いほど知っていた。
というよりも、初めてあったその日。
彼の悪魔の実の能力に魅せられたのだ。
そんなヴァクトが何故慌てているかといえば、そんな尊敬する上司のせいであり。
彼はアルトがいるであろう部屋のドアを思いっきり開け放った。
「アルト中将!!」
『なんだねヴァクト君』
「なんだねじゃないです!仕事放置して何処行ってたんですか!!」
『ガープ中将とお茶飲んでた。君も来ればよかったのにな』
「……」
『まぁほら、少しだけ悪かったと思ってるから今こうやってデスクワークをやってるんだ。多めにみてくんない?』
インクのついたペンを握り、ニコリと笑うアルトは確かにデスクワークをこなしていた。
彼の笑顔に気圧されため息をついたヴァクトは仕事をするアルトを眺めながら足を動かした。
「何か飲みますか?」
『ん?じゃあ紅茶を頼む』
「了解です」
『ヴァクトの淹れる紅茶美味しいから好きだよ』
プリントに目を通したまま恥ずかし気もなく呟くアルトを睨みつけるとヴァクトは静かにティーポットにお湯を入れた。
――このお気楽上司が!!
精一杯の毒を心中で吐き、「どうぞ」と机に紅茶を置くとプリントから目を外したアルトと目があった。
「なにか?」
『いや、今心の中で悪態ついたろ』
「!!」
『はっはっはー、覇気使いを舐めない方がいいぞ?』
けらけらとからかうように笑うアルトからは彼の秘めた強さなど感じさせず、ただの好青年のように見えた。
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