依存している。

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「アルト中将、七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴが来ていますが通しますか?」

『どうせあの人は拒否しても入ってくるだろ。通して良いよ』

「了解です」




正義の二文字を掲げた男が敬礼をし、部屋を出て行く。
部屋に取り残されたのは、若くして“海軍中将”という地位を得た中世的な顔をした男性だった。


アルトと呼ばれた男性は、手元にあった一枚の手配書を机の引き出しにしまい、海軍のコートを羽織ると椅子に座り、足を組んだ。
青みがかった紫の髪をポニーテールにし、高級そうな黒いスーツに身を包むその姿は、作り物めいた何かがあり、男女問わず他の者を惑わすオーラを纏っていた。


窓の外を見つめ、しばらくすれば先ほどの部下とドンキホーテ・ドフラミンゴの声が廊下に響き渡った。
部下の声からは焦りが見られ、からかわれて遊ばれていることが推定できた。
アルトは小さくため息を吐くと、勢いよく開け放たれたドアに向かい口を開いた。




『久しぶりだな』

「フッフッフッ、つれねぇあいさつだなアルトちゃん。もっと歓迎してくれてもいいのによォ」

『あんたにかける歓迎の言葉なんてないよ』

「フッフッフッ」



何が面白いのか、高らかに笑い上げたドフラミンゴは自分の足元にあったソファに勢いよく腰掛けた。
アルトはドフラミンゴの動きを眺めつつ、一つのことを思い浮かべた。



『そういえば、数年前に会わせてもらったあんたの優秀な部下君の手配書が回ったよ。最初からあの懸賞金なんてすごいじゃないか』

「ローか…確かにあいつは優秀だったよ」

『この世代はすごいことになりそうだな。東のモンキー・D・ルフィ。南のユースタス・キッド。北のトラファルガー・ロー。この三人は特に期待できそうだ』



楽しそうに口元を歪ませ、足を組み替えたアルトはドアの前にずっと立っていた部下の存在に気づき、ソファに座るように促した。



「“血液性愛<ヘマトフィリア>”の上司を持つと大変だなァ、ヴァクト君」

「アルト中将を変態みたいに言わないでください。あくまでも“吸血性愛<ヴァンパリズム”です」

『フォローになってねェよ、ヴァクト君』



好きで“吸血性愛”になったわけじゃない、と一言漏らしたアルトはソファに座るヴァクトを睨みつけた。



『てか、吸血性癖なんてないぞおれは!!』

「フッフッフッ、吸血鬼<ヴァンパイア>が何を言う」

『あんたと話すのすげェ疲れる!!』



己の右手で額を押さえ、遠慮なしに大きなため息を吐いたアルトはチラリとドフラミンゴを見つめた。



『で、あんた何しに来たの?ただお喋りしにきたわけじゃないだろう?』

「いや?ただお喋りをしにきただけだ」

『……』

「フッフッフ、そう警戒するな」



警戒するなというのも無理な話。
この男の異常さは呆れるほどに知っていた。
三等兵という小さい頃からこの男に気に入られ、何度も屋敷に招待されたアルトはこの男の残忍さや愚かさをよく知っている。


カーテンを靡かせる風を感じ、窓から見える大きな海を眺めれば先ほどまで手元にあった手配書の男が思い浮かばれた――目の前の男の下を離れ、新しく海賊を始めた男トラファルガー・ローの姿が。










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