混沌の渦

□テニスコートの怪〜ドキドキ水族館デート〜
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「いーじゃん、遊ぼうよ♪なかなかないじゃん?こんなとこでバッタリなんてさ」
「だから、今日は約束があるんだって…」
説明しても引き下がらない相手に女の子の方はどうしたものかとため息をつく。

「困ってんじゃん、アンタもしつこいね」
「む。…あれ、なんだ越前君じゃない。都大会以来?お♪ かわいいね、キミ。それカラコン?てか何々デート?」
と冷やかす男子をスルーし、リョーマは女子に挨拶する。
「ちぃーっす、橘さん」
「久し振りだな(にこっ)」
「ちょっ、相変わらずだね!キミは!」
「コラ、千石!大人気ないなぁ、もう」
リョーマが声をかけた人物――占いや呪い、女の子が大好 きなオレンジ髪が特徴的な千石清澄。そして、額のホクロ を金色の前髪で隠すボーイッシュな橘桔悠(きゆ)だ。
「千石さんって、ヒマなんスね」
「桔悠ちゃん〜越前くんがイジメる〜」
千石は抱きつこうとして桔悠の肘鉄砲を喰らう。千石をあ しらいながら約束の相手を探す桔悠は
「あ、手塚!」
と目的人物を見つけて顔をほころばせる。
「ぶ、部長?!」「手塚くん!」
「……」
呼ばれた人物は眉を顰める。あきらかに不機嫌になった彼の傍へ桔悠は気にせず笑顔で駆け寄る。
「遅くなってすまない、電車が遅れて」
「大丈夫、いい暇つぶしができたからな」
と悪戯っぽく笑う。
(ふーん、橘さんって同い年の前だとこんなんなるんだ。 可愛いじゃん)
橘以外の三年生がいない不動峰を束ねる部長なのだからしっかりしていて当然だが。そういう姿しかみていない越 前は新鮮さを覚えた。

「何々?!いつからなの?」
興味津々な千石は二人を問いただす。
「んー?都大会辺りだよな、手塚」
「…ああ」
「で、で、どっちから告ったの?!」
「俺からだが?」
「ぶちょーが?想像つかないっス」
「『俺のために毎日味噌汁を作ってくれ!』とかね」
「…付き合う通り越してプロポーズじゃん、それ」
「……」
人の恋バナは面白いが、顔見知りではないのでついて行けず、鵺野はぽけーっとしていた。はた、とリョーマは鵺野の存在を思い出し、慌てる。
「っ!じゃあ、俺はこれで!ごめん、行こう?」
「ん、いいのか?」
「うん。大丈夫、早く行かないとイルカショー席取れないよ」
「イルカショー?越前たちも新しく出来た水族館に行くのか?」
「だったら一緒に行かないか?割引券、四人分なんだ」

桔悠の提案でリョーマたちはダブルデートをすることに なった。
鵺野とふたりきりではないのは残念だが、手塚と桔悠が付き合ってるというネタを菊丸や桃城相手に面白おかしく話 ができる。内心、邪悪な笑みを浮かべる越前なのでした。
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