萌黄の風

□とつぜんですが、好きな子が女の子になりました。
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合同合宿。
今回、青学が相手に選んだのは不動峰だけのはずだったのだが、
どこでどう話を聞きつけたのかーー

「面白そうなことしてんじゃねぇか、アーン?」
「んふ♪聞きましたよ、協力してあげますよ」
「ふむ、たまにはこういう大人数でというのも悪くないだろう」
「悪いな、うちまで参加させてもらって」

氷帝・聖ルドルフ・立海・山吹が押し掛けてきた。


長野のとある合宿所、周りは自然とコートのみ。
車で街まで一時間、買い出しはすでに済ませてある。
道具はそれなりに揃っているとはいえ、テニスをするには整っているとはいえない設備にーー
(果たしてコイツらと何もなく穏やかにやっていけるのだろうか…)
一体何のために、常識的で理解のある不動峰を誘ったのか…
こういうとき、何故か驚くほど役に立たない手塚。

「杏ちゃんから桔平がおるち聞いて、こっち来たばい」
四天宝寺からも一人合流して、大石の不安な合同合宿は幕を開けた。



そんなある1日ーー
雨な上に近くの体育館も借りれず、
ひたすら民宿で暇を潰すのみの1日。


各々自分の好きなように過ごしている。

そんな中、
夏休みの宿題を終わらせてしまおうかと、座布団の上に座る四人組――

「フシュ――…橘さん、英語得意っスか?」
「ん?まぁ出来る方だが」
「ここの訳なんスけど」
「あ、俺もここ教えて!ワケわかんねぇ」
「宍戸、少しは辞書を引いて自分で考えろよ…ι」
「あの、俺も教えて欲しいです」
「不二弟、俺が先だ!」
「大人気無っ!」



そんな彼らを厭らしい目で離れたところから眺める輩達。



「ふふ。絵になってるねー」
「…隠し撮りッスか、不二先輩」
「ああ、俺もそこに混ざりてぇ」
「分かってんの?抜け駆け禁止、だかんね!」

などなど。意見は十人十色、各々自分の憧れの人へ向けられる。

【抜け駆け禁止】ーー破ったら、恐怖の乾汁の新作の餌食になる。
そんな中、一人近づく人物…乾である。
「お疲れ様、コレ管理人さんからの差し入れ。李酢ジュース、甘さ控えめで美味しいよ」

乾の持つピンク色の液体が入ったグラスは4つ。
「……」
過去、乾汁の犠牲となったことのある経験者は疑いの眼差しを向ける。
「海堂、汁じゃないからな」
「…ぉ、美味いじゃん!」
「ん、飲みやすいなコレ」
「うーん、橘が言うなら間違いねーか」
ゴクゴクと飲み干していく。
「えー!乾ぃ〜俺たちにはないの〜?しかも、それって【抜け駆け】じゃにゃい??」
と騒ぐ菊丸を、
「ちょっとまって、英二。あの乾が何もしないわけないじゃない。きっと何かあるよ?」
と不二が肩をつかんで制止する。






数分後――



「うーん?僕の思い過ごしかな?」

ここまで何も起こらず、再び机に向かう四人だったが裕太と海堂のペンがぴたりと止まる。
ドクンと全身が脈打つ感覚が襲う。
「…っ!」
「くあああああっ!」
どうやら乾汁の効果は時間差で来たらしい。
バタバタと部屋を飛び出していく。
宍戸と橘はというと、何事もないように続けている。
ーーが、ガタンと無言で橘が立ち上がり二人の後を追うように走り去る。
それを見て宍戸も耐えきれない、というように
「だぁあああっ!!!激マズだぜぇえええええええっっ!!!」
と叫んで出て行った。




「なんだ、やっぱり乾汁なんじゃない」
「…で、大丈夫なんですか?もし橘さんに何かあったらーー」
「たかだか汁ぐらいで、たるんどる!」
「ご心配なく、むしろ…」
そう乾が言いかけた、その時ーー



「「「「な、なんだこりゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」」」」










「今回、開発したのは『女体化する薬』だ」
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