萌黄の風

□聖者の贈り物は…
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全国大会準々決勝 青学対氷帝戦終了後――



「…綺麗な髪だったのに。何でそんな約束をしたんだ?」
呆れ驚く恋人。
「あのくそガキ…人が気絶してる間に……まぁ、自分から言ったことだ。
いまさら後悔なんざしちゃいねーが、ホントにするとは…」
やはり後悔しているようだ。
「似合わないな。跡部の坊主頭。
まぁ、髪なんかすぐ生え てくるさ」
苦笑しながら跡部の頭を撫でる橘。
「なんだ、てめぇは俺様の髪に惚れて付き合ってたのか?」


(ムカムカするぜ、いい男が台無しだ。あいつらぜってぇ コロス!)←向日や宍戸などにからかわれまくった人。

どす黒く殺気を漂わせる跡部を横目に見ながら、橘は深い 溜息を吐く。
「……なんでオマエなんかと付き合ってるんだろうな」
「んなっ?!てめぇ」
「傲慢で我儘で自分勝手で、
いいトコは顔と金があるくらいだからな」
(この野郎…後で泣かしてやる!)

オマエが好きだ。俺様と付き合え。
と抱えきれない程の花束を渡された時、橘は困惑した。 勿論最初断った。男同士で恋愛しても……なぁ?

跡部は落とす自信満々で告白したが見事フラレ、それでも 諦めず食い下がった。
強引にデートに誘われ、
拉致に近い状態で家に呼ばれ…
喧 嘩が絶えない。

だが、時折見せる跡部の優しさ等に触れて 段々と橘は跡部に魅かれた。 が、そんなこと跡部は気付いちゃいない。自分がデートに 誘っても後輩優先だったり本気で断られたり…

いくら跡 部でも正直な所橘が自分をどう思っているか不安なときが あった(らしい)

しかも今は自慢の髪も失い、かなりへこんでいる。
平然を装っていることくらい橘はお見通しである。

「跡部…」

呼ばれて橘の方を向く。と、目の前に顔があった。
橘の澄んだ綺麗な 強い光を宿した瞳に跡部が映っている。

「俺はオマエの髪や顔が好みだからとか…金持ちだから付 き合ってるんじゃない

『跡部景吾』が好きだからココにいるんだ」

……………←目を見開く跡部。

普段の橘ではありえない台詞に跡部は素直に嬉しいらしく 顔が赤くなる。

そんな跡部の反応を見て、自分の言った台詞に恥ずかしく なったのか、橘も頬を赤く染めている。
暫し沈黙の時間が流れる二人。

先に沈黙を破ったのは跡部の橘に抱きついたときのが ばっ。という効果音である。

「ぅわっ?!」
あまりの勢いに橘は押し倒され、更に強く抱き締められる。
季節は真夏だが、今の二人の間に流れるのは 春の花と踊る穏やかな、暖かい風のような空気だ。 いつもの二人にはない珍しい空気である。

「……でもやっぱり髪はあったほうがいいな」
「じゃあ今すぐ生やす!」
「どうやってだ?」
「"もう悩み無用"て歌ってんだろ。あのCMのやつで だ」(真剣)
「……ぷっ、ははは」
「?なんだよ」
「くすくす」
「なんなんだ?!」

跡部のおばかぶりに笑い転げる橘。
「だから!何笑ってやがんだ?!」
「…くすくす、ぃゃ…別に…ふふっ」
まだ笑う橘にいい加減堪忍袋が切れそうな跡部。
そんな彼にーー

綺麗な微笑みを浮かべながら
「……好きだからな」
と本日2度目の告白。

「…俺もだ」
そう答え 跡部は橘の唇に自分の唇を重ねた。

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