混沌の渦

□テニスコートの怪〜ドキドキ水族館デート〜
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「鳴介先生?リョーマだけど…明日、暇?」





青春台駅、10時に待ち合わせ。正直、初めてだ。俺が一時間前から待ち合わせ場所にいるなんて…
「おっそいな〜、また妖怪と闘ってんのかな?」
以前、童守駅で待ち合わせしたき、学校で妖怪と一戦交えてきたとボロボロの状態でやってきた。
「ちょっと!病院は?」
「このくらい、大丈夫だって。それより待たせて悪かった な」
自分のことより俺のことを考えてきてくれた…



回想していると、後ろから肩をぽんぽんと叩かれた。
「お待たせ、リョーマ。ちゃんと遅れずに来たみたいだな」
その口調は鵺野そのものだが、振り返ったリョーマの目に 映った人物は同い年くらいの女の子だった。
長い髪をお団子にし、白いワンピースに身を包んだ、赤い 瞳の少女――

「え、め、鳴介先生?なわけないよね。誰、妹?」
「鳴介だよ」
にっこり笑う少女に、訳が分からずに「は?」と呆ける。
「みんなには秘密だけど俺、変身出来るんだよ〜。今日は 特別に女の子バージョンです」
――この間の試合、勝ったご褒美な♪どうだ?
とくるりと自分の姿を見せるように回る。 その仕草は完全に女の子のものだ。
「…可愛い、けどさ」
変身、と言われてもピンと来ない。霊能者とはそれほどに スゴいものだったろうか?
記憶の中にあるのはテレビでよく目にする胡散臭い奴らばかり。
鵺野が胡散臭いとは思わない。【鬼の手】を使い、この世のものではないモノと戦う姿を見ているし…大怪我をしようと一切金は取らず、ボランティアの域を超えた除霊を行っている。

鵺野の面影を残す美少女を前に、リョーマは顔を赤く染め ながらも素直に喜べずにいる。そんなリョーマを見つめて
「…もっと喜んでくれると思ったんだけどなぁ」
『ご褒美』と言ったが、このあいだ会ったときに親子に間違えられてリョーマの機嫌が悪くなったため、悩んだあげくの陽神の術だったのだ。ワンピースの裾を摘んでヒラヒラさせながら鵺野は拗ねる。

(う、かっ、かわいい!)
リョーマはぎゅっとその手を握る。
「嬉しいんだけどさ、現実味がないっつーか。だって普通有り得ないじゃん」
そう言ったリョーマに、鵺野は少し寂しそうな顔をする。
「俺、妖怪とか幽霊とか全然信じてなくて。てゆうか、テニス以外あんま興味ないし。鳴介先生に会わなきゃ、こん な魔法みたいな日常過ごすことないでしょ……ま、楽しいからいいんだけどね」
と言って顔を上げた視線の先、男がナンパしているのが目に留まる。
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