Free!長編@

□純粋な輝きで
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ったく夕方5時に入口集合って言ったのは

どこの渚だよ、いねえじゃねえか!

渚どころか誰もいねえ!



10分前には集合場所に来ていた俺

まるで俺が一人で張り切ってるみてーじゃねえか!





…まあ大方予想はつく

ハルの野郎が風呂から上がらないとか

理由はそんなもんだろ






時間を少し過ぎたところで

俺の携帯が震える

真琴からの着信だ




「おせえ!」

通話が始まりすぐに文句を言うと

「ごめん、凛!ハルがなかなかお風呂から上がらなくて!」




やっぱりな…

後ろの方から渚と怜が

騒いでいるのが聞こえる

「ハールちゃーんはーやーくぅー!」

「遙先輩!もう5時は過ぎていますよ!」





まあ…ハルらしいけど…

俺を待たせるなんて…この野郎…




「ハルが着替えたらすぐ行くから!」

申し訳なさそうに言う真琴

別に悪いのはお前じゃねえよ、とか思いながら

「おう、じゃあな」

と電話を切る




携帯をポケットにしまい

一息つく、この様子だと30分はかかるな






周りに目をやると、浴衣浴衣で

どいつもこいつも浮かれたような顔しやがって










どの女の浴衣をみても

どれもこれも同じに見えてしょうがない

こんなこと前にも言ったら

江にすんげえ怒られたんだっけ…






下を向いてふぅっと息を吐き

パッと顔を上げると

少し俺の視線から逸れたベンチに…











「あ…」







紛れもない、あいつがいた

名前も知らないあいつ

幽霊じゃなかった…一瞬そう思って

よく目を凝らしてみてみる





忘れもしない、綺麗な黒髪は

控えめだが、可愛くセットされていて

さっき俺が、どいつもこいつも同じと言った

浴衣姿は…驚くほどに…ひどく綺麗だった






昇降口で見かけたとき

俺がそいつに…すでに惚れていたんだとすれば…




俺は、今で2度目…そいつに惚れた…












一人でベンチにいるところを見ると

あいつも俺と同じ、ってとこか



ただそれだけなのに、ちょっと嬉しくなった

名前も知らねーのに…変な話だけど






目が離せなくて

ついついじーっと見てしまっていると

そいつに近寄る男2人組…










もしかして、あいつの待ってるやつって

こいつらなのか…?






そう疑問に思って

どちらかが彼氏だったら…そう考えると

胸が苦しくなる感覚に陥った








だけどその心配もすぐに晴れた



どうみても、そいつは嫌がっているように

困っているように見えた

足を踏ん張らせているところを見て確信した















そいつに触れる男たちの手









俺の中でふつふつと沸き上がる感情









"離してください"







そう聞こえたときには


俺の足は自然と動き出していた











そいつに触るんじゃねえ










苛立ちを抑えながら


そいつらに近寄って行った







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