導きの詩

□其々の戦う意思
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あれから四年。

僕は14歳…実際でいう中学2年生となっていた。



普段となんら変わらない日常を送った、中学校の帰り。
とある奴から呼び出しをくらった僕はコンコン、と月鬼ノ組官舎にある執務室の扉を叩いた。返事はない。
「グレン中佐、グレン中佐ぁー」
この四年で何度も呼んで呼び慣れた中にいるはずの人の名を呼ぶと、案の定思っていた通りの返事がきた。
「んだようるせえなあ、零」
「呼び出してきたの、中佐なんですけど」
はあ、とため息をつきながら僕が失礼します、と部屋の中に入ると「勝手に入ってくんな」と怒られた。だから、ここに僕を呼び出したのはそっちじゃねぇか。
もうこのやり取りを慣れてしまった僕はそう内心で思っておき、とりあえずこちらに背を向けて座っている中佐の机の前まで移動した。
「それで、何のようなんですか?わざわざ呼び出して」
「おい、入ってくんなってのが聞こえなかったのか?無視すんじゃねえよ」
「最初に無視したのは中佐で〜す」
お前可愛げねえなあ、という中佐のため息交じりの言葉を丸っきり無視して僕はそっぽを向く。
こちとら中学の友達たちの相手をしてて色々疲れてるんだ。精神年齢の高い僕がピチピチの中学生に話を合わせないといけないのが、どれだけ苦痛か。
とりあえず中佐が話を切り出すのを待つことにした僕は、欠伸を噛み殺しながら懐に隠していた読みかけの小説を開いた。ふむ、やはりこれはなかなか面白い作品だ。
「…お前、上官の前でよくそんな態度をとれるな」
「中佐が話を切り出すのが遅いのが悪いんです。それに、ここまで僕を待たせるのは他に誰か待ってるか、それか時間を待ってるか。そんな状態なんでしょ?」
本から顔を上げないで聞くと、その通りだが態度がウザい、と立ち上がった中佐に足で脳天蹴られそうになった。もちろん避けたが。
「ちっ、避けんなよ」
「いやいや、避けますって。か弱い女の子の脳天蹴ろうなんて、そんな上官普通います?」
「お前のどこがか弱いんだよ。ねえわ。…んなことより、時間がきたからついてこい」
頭をぽりぽりとかきながら、面倒臭そうにその場を立ち去ろうとする中佐に僕はもう一度ため息をついて後を追う。
「んで、どこに向かうんですか?」
「あ?教室だよきょーしつ」
教室、というと、月鬼ノ組の研修教室のことか、と理解する。でもなんでまた?
「中佐。僕、研修期間とっくに終わってるんですけど」
「はあ?一からやり直したいのかお前」
「そんなこと一言も言ってませんけど?」
「本当うぜえなお前。俺が好意で教室に連れてってやってんのに」
好意?とはどういうことだろうか。
うーん、と考えて一つの懐かしい顔が浮かんだ。
「もしかして…?」
「ま、すぐにわかるだろうよ」

そうか。彼が、とうとう月鬼ノ組に入るのだろうか。
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