奇跡

□*キセキの旅行。
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笠松はケータイを
マナーモードにすると
家に帰ることにした。

まだ周りでは喜ぶ者も悲しむ者も
溢れかえっている。
やったぁ!!と喜ぶ女子たちを見れば
やはり女子は苦手だな...
と改めて思った。

…行きは電車だったが時刻表を見ると
次の来る時間は30分後。

30分何をして時間を潰そうか…と
駅を出て辺りを見回していると
目の前に大きな車が2台停まった。

だが自分には関係ないと思い
通りすぎようとすると
「笠松さん」と何処からともなく
声をかけられた。
ギョッとして振り返ると

「センパァアイ!!
おめでとうございまぁあす!!」

「黄瀬っ!?お前らも…え…!?」

黄瀬が開いた窓からひょっこり顔を出して手をブンブン振っている。
するとまた一人、一人と窓から
顔を出す。総勢11人。

なんとここまで
駆けつけてくれていたのである。

驚いた笠松は黄瀬の乗った車に
近づく。するとガチャリとドアが開き
同じく乗っていた赤司が
「乗ってください」と優しげに微笑む。
その笑みにも驚きながら乗り込む。

車には黄瀬、赤司、降旗、
青峰、桜井、スーツ姿の運転手が
既に乗車していた。

「センパァアイ!!!」
黄瀬は思いっきり抱きつくと
歓喜の声を上げる。まだついていけず
目を白黒させていると降旗が
状況をアバウトに話してくれた。

笠松が見に行っている間に黄瀬の
呼び掛けで皆が集合

赤司が車を2台用意してくれた

笠松を迎えにいく

…ということらしい。

「ワリィな赤司。」
苦笑いしながら言えば
「気にしないでください。」
そう言いながら降旗の頭を撫でる。
赤司も降旗との久々の再開に
喜んでいるようだった。

「じゃあ車出してもらえるか、」
運転手に言うとカーナビをセットして
目的地に向かう。

このまま家に帰ることだと思い、
くつろぐ笠松。
勉強してろくに眠れなかったため
安心したら睡魔が襲ってきた。
黄瀬に抱きつかれたままで
喜びを分かち合いたかったが
ここでプツンと意識が途絶えた。


『目的地、奈良―――…』

カーナビの電子音は笠松の耳に
届かなかった―――。
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