cherry side&parallel

□energy 〜エナジー〜
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マンションの1階で、ちょうど彼女のオフィスから出てきたゆうちゃんとばったり会った。

「げっ、要兄」
「げっとはずいぶんだなぁ。
ゆうちゃん、ここで何してたの?」

わたと妹ちゃんは、学校帰りにここへ寄って宿題などをして過ごしている。
ゆうちゃんの目的は、まぁ別のことだろうけどね。


「夕飯まで少し時間あるし、俺もちょっと寄っていこうかな」
「ちょっ、待てよ要兄っ、今はっ。
あ、後でにしろよっ」

「ん?」

向かう先をエレベーターから彼女のオフィスへ変えた俺を、ゆうちゃんが必死になって止めようとする。

「なぁに?ゆうちゃん。
今行くとなにか、都合の悪いことでもあるの?」
「別にそんなんじゃねぇけど、とにかく今はやめろって!」

「ゆうちゃん、服引っ張らないでよ」
「いててててっ、ちょっ、やめろよっ」

まだまだ力では現役高校生にも負けない。だてに鍛えてないからね。
しがみつく手を軽く捻り上げてから、オフィスに足を踏み入れた。









「お疲れ様、居るかな?」

返事はない。
夕日が射し込む部屋の中を一目見渡す。
留守かと思った次の瞬間、そこに見つけた。



雑誌を脚の上に広げたまま、ソファーで眠る2つのシルエット。
彼女と、それから妹ちゃんだ。


一緒に雑誌を眺めていたのかもしれない。
妹ちゃんは彼女の肩に頭をのせて、彼女はそこに白い頬を寄せている。

まるで姉妹のように寄り添う2人。
あまりにも無防備な、その姿。













パシャ。







パシャパシャパシャ、ぱしゃり。



「おいっ、要兄っ、なに撮ってんだよっ」
「だってさぁ、見なよゆうちゃん。
2人ともまるで天使、だよね」

奇跡のようなその姿をあらゆる角度から撮影していると、俺の携帯を奪おうとゆうちゃんが躍起になる。
頭上に高く掲げてみせると、背伸びをしてバタバタと両腕をばたつかせた。
まだまだ身長でも負けてないよ、おにいちゃんは。


「ちょっ、消せって!くっそ、このエロ坊主っ」
「ゆうちゃん口が悪いよ。ふうちゃんが真似するからやめてよね」
「おいっ、そんなの撮ってどうすんだよっ」

撮った画像を確認する間も、ゆうちゃんは携帯を奪おうと必死だ。


「もう、しつこいなぁゆうちゃんは。分かった分かった。
ゆうちゃんが好きな妹ちゃんは写らないように撮るからさ」

「はっ!?なんだよそれっ!そんなんじゃねぇよ。

…でも、撮るなよな」

顔を赤くしてそう呟いた、素直でかわいい弟に思わず苦笑する。








「あっ、京兄からメールだ、メシの準備だって。どうする?要兄」


「うーん、2人ともよく眠ってるから、もう少し寝かせておこうか。
ゆうちゃん悪いけど、京兄のこと手伝ってあげてくれる?」

「ちぇっ、…まぁ仕方ねぇな」

ぶつぶつと文句を言いながら、荷物を手に出口へと向かうゆうちゃん。

「要兄、へんなことしたら承知しないからな!」



  
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